中国、ウクライナ情勢で緊張を高める行動に反対、ロシアとはエネルギー協力などを推進

(中国、ロシア、ウクライナ)

北京発

2022年02月10日

中国の習近平国家主席は2月4日、北京冬季オリンピック開会式出席のため訪中したロシアのウラジーミル・プーチン大統領と首脳会談を行った。中国外交部の発表によると、両首脳は中ロ関係および国際社会の戦略的な安全保障や安定に関する一連の重大な問題について意見交換した。

また、同日には「中ロの新時代における国際関係および世界の持続可能な発展に関する共同声明」が発表された。声明には、「中ロ両国はNATOの拡大継続に反対し、NATOが冷戦時代のイデオロギーを放棄し、他国の主権、安全保障、利益などを尊重し、他国の平和的な発展を客観的・公正に見るよう求める」との文言が盛り込まれた(注)。

中国はウクライナ情勢に関して、緊張を高める行動に反対する姿勢を示している。外交部の趙立堅報道官は1月28日の定例記者会見において、ウクライナをめぐる米国の動きについて「緊張した雰囲気をつくり出すことはウクライナの危機を緩和することにならず、むしろ地域や世界の安全保障情勢における不確実性を高めるもので、中国はこれに断固反対する」と述べた。

なお、ウクライナ情勢に関連して、ロシア-ドイツ間のガスパイプラインプロジェクト「NS2(ノルド・ストリーム2)」が焦点の1つとなっているが、今回、中ロ両国が署名した協力文書の中には、中国石油天然気集団(CNPC)とロシアのガスプロム(NS2プロジェクトを主導)との天然ガス売買に関する契約も含まれている。中国社会科学院ロシア東欧中央アジア研究所の李勇慧研究員は、同契約はロシア極東を通る天然ガスパイプラインによる中国向けガス供給を拡大するものだ、と解説している(「大衆日報」2月7日)。

習主席は、プーチン大統領との首脳会談において、エネルギーにおける戦略的パートナシップを強化し、石油や天然ガスにおけるビッグプロジェクトを着実に推進し、エネルギー分野における重要技術の共同イノベーションを強化し、新エネルギー分野の協力を開拓し、両国のエネルギー安全保障を相互にサポートし、世界のエネルギーガバナンスシステムの改善を推進すると表明した。中国の専門家には、ロシアはエネルギー輸出を主とする自国経済がEUなどの制裁から受ける影響を最小化するため、石油・天然ガスの輸出市場の開拓に力を入れており、中ロが天然ガスや石油において協力を強化することはロシアが西側の経済制裁を打破することに寄与する、との見方もある(「環球時報」2月7日)。

(注)中国・国連代表部の張軍大使は1月31日の国連安保理でのウクライナ情勢に関する会合(非公式協議)において、「現在の緊迫した情勢を処理する上でNATO拡大の問題を避けることはできない。NATOは冷戦期の産物で、NATOの拡大はブロックによる政治が集中的に表れたものだ。一国の安全は他国の安全を犠牲にするべきではなく、地域の安全は軍事ブロックの強化や拡張によって保障されるべきではない」と中国の立場を表明している。

(小宮昇平)

(中国、ロシア、ウクライナ)

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