自動車・バイク輸入禁止は2022年も継続の様相

(スリランカ)

コロンボ発

2022年02月09日

スリランカの自動車・バイクなどの輸入制限措置は、一部特殊車両や商用車を除き、2022年も通して継続される様相を呈している。政府は2020年3月当時、新型コロナウイルスの影響によって通貨スリランカ・ルピーの減価圧力が強まっているとして、この対策や金融市場の混乱を防ぐ措置として、当初3カ月間、自動車と非必需品の輸入に関する信用状の開設を停止するとしていた。この措置により、信用状による取引のみが認められている自動車やバイクの輸入が停止していた(2020年4月30日記事2020年6月30日記事参照)。

バシル・ラージャパクサ財務相は2021年12月の酪農業界団体の集会に招かれた際、「スリランカは食糧、医薬品、燃料といった生活必需品に対して、外貨を優先して使用していく」と言及した一方で、2022年も新車の輸入は認めないとの発言をしていた。2020年に自動車の輸入制限が敷かれた直後は、政府機関幹部の中には「今回の輸入制限措置は3カ月で解かれるので心配はない」と楽観的な見方を示す者もいた。実際には無期限に延長が繰り返され、現在に至っている。

輸入額全体に占める自動車の割合は、輸入制限前では4%程度(2019年)、輸入制限後では1.8%(2020年)と必ずしも大きくはないが、政府は「外貨不足の問題が解消されない限り、自動車・バイクの輸入禁止が解かれることはない」趣旨のメッセージを発している。

輸入制限措置が取られて以降、スリランカに輸出実績のある日本の自動車・バイク関連企業は、独自のルートから政府に改善を申し入れたり、現地代理店は内部留保を取り崩したりしながら従業員の生活を守るなどして、事業活動を続けてきた。補修部品や発電機の輸入に関しては、180日ユーザンス付き決済条件により輸入は可能なため、この条件を受け入れて、商流を維持している日系企業もある。現地の日本商工会は在スリランカ日本大使館の支援を得つつ、2020年10月、2021年10月と2度にわたり、バシル財務相(2020年当時は与党幹事長)に輸入制限緩和を求める陳情レターを堤出、2020年には直接面会し直訴もしたが、具体的な改善にはつながらなかった。

スリランカでは、2020年2月に約79億5,000万ドルあった外貨準備高が「新型コロナ禍」の影響を受けて、2021年11月に約15億9,000万ドルにまで減少した。2022年1月中旬の5億ドルの外貨建て債務返済は、インドや中国とのスワップ協定などによって外貨を確保して急場をしのいだ。次の大型債務返済は2022年7月の国際ソブリン債の返済とされる。外貨不足問題については引き続き厳しい状況が待ち構えていることから、自動車・バイク輸入の再開が見通せる環境とはなっていない。

(糸長真知、ラクナー・ワーサラゲ)

(スリランカ)

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