スリランカ政府、自国通貨の保護を目的に輸入規制を強化

(スリランカ)

コロンボ発

2020年06月30日

スリランカ政府は5月22日、新型コロナウイルスの影響によりスリランカ・ルピーの為替下げ圧力の緩和と外貨流出防止を目的として、3月および4月から実施している各種輸入規制を更新する官報(官報臨時通知第2176/19号)を発出し、規制の一部緩和と強化を発表した。

スリランカ中央銀行は3月19日、自動車と非必需品の輸入に関する信用状開設の停止を発表。本措置に伴い、スリランカでは、信用状による取引のみが認められている自動車の輸入が完全停止していた(2020年4月30日記事参照)。4月16日には、新たな官報(官報臨時通知第2171/5号)を発出し、医薬品や燃料などの必需品を除き、ほぼ全ての品目の輸入を一時停止し、この規制は向こう3カ月間継続するとした。同時に、輸出のための原材料の輸入については、輸出入管理局から特別な承認を得る必要があるとしていた。

これに対し利害関係者からの不満が噴出したことから、5月22日の官報では、輸出のための原材料輸入に関する承認の取得を不要とするなど、規制を一部緩和した。一方で、自動車の輸入については、乗用車のみならず、商用車、アフターパーツ(注1)も輸入規制対象リストに追加するなど、規制を強化する内容も含まれた。

5月22日付官報の主な内容は以下のとおり。

【規制緩和】

  • 4月16日付官報で発表された、輸出のための原材料の輸入に関する承認取得は、以降不要。
  • 4月18日より以前に全額が前払いされた輸入品は、通関可能とする。

【規制強化】

  • 自動車は、乗用車のみならず、商用車、アフターパーツも輸入規制対象リストに追加。
  • 3月19日以前に信用状開設された車両は当初輸入可能とされていたが、ユーザンス(輸入代金支払い猶予)を設けるようガイダンス発出。
  • 26品目(注2)の輸入品に特別商品税(従量税)を課税。
  • 輸入品への5万ドルを超える前払いが必要な場合、銀行保証、スタンバイ信用状、または輸出入管理局の承認が提示されない限り、銀行は全額または部分的支払い(送金)を履行しない。

企業からは、リスクを容易には取れないとの声

一連のスリランカ政府の輸入制限措置について、日系や欧州の進出企業からは、開設済み信用状の無効化は、国際規範UCP600に抵触し、スリランカの信用に大きな影響を及ぼす可能性があるため、早急な改善が必要との声が上がっている。

スリランカで新車販売を行う企業によれば、5月から6月にかけて日本から船積みされた車両の輸入について、本来は猶予期間無しの信用状開設が必須であるが、「サプライヤー(輸出者)から1年のユーザンスを取得することで輸入可とする」との連絡があったとのことだ。それを受け、「輸出者は、1年間売掛金の回収ができないリスクを容易に取れない」と言及した。

(注1)完全に輸入禁止の品目、90日間のユーザンス取得で輸入可能な品目がある。

(注2)マーガリン、砂糖、魚缶詰、ダール、パーム油など。品目によって関税率最大340%となる。

(ラクナー・ワーサラゲー、糸長真知)

(スリランカ)

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