トウモロコシ由来エタノールのCO2排出量、ガソリンに比べ24%高い程度、米学術誌で指摘

(米国)

ニューヨーク発

2022年02月18日

米国科学アカデミー紀要が2月14日に掲載した調査研究外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、トウモロコシ由来のエタノールの二酸化炭素(CO2)排出量はガソリンより少なくとも24%高い可能性があることが分かった。調査研究はウィスコンシン大学マディソン校ネルソン環境研究所が行った。

米国には、CO2排出量削減などの目的で、製油業者にガソリンまたはディーゼル燃料にエタノールを含むバイオディーゼル燃料の混合などを義務付ける再生可能燃料基準制度(RFS)がある。エタノールは主にトウモロコシから精製されており、全米のトウモロコシ畑は2008年から2016年にかけて280万ヘクタール拡大している。

農務省の2019年の調査では、トウモロコシ由来のエタノールは生産から燃焼までのライフサイクル全体で見た場合、ガソリンに比べて温室効果ガス排出量が39%少なくなるとされていた。しかし、今回発表された調査研究は、トウモロコシを栽培するために新たな土地利用が拡大するにつれて、地中のCO2放出が進むだけでなく、使用肥料が増えて水質汚染も進んでいることを考慮すれば、トウモロコシ由来のエタノールのCO2排出量はガソリンよりも少なくとも24%高くなる程度だと分析している。調査をまとめたタイラー・ラーク博士は前述の農務省調査について、地中からのCO2排出の影響を過少評価していると指摘する(ロイター2月14日)。

環境保護庁(EPA)は2022年に義務付けるバイオディーゼル燃料の混合総量を議論しており、2023年以降の扱いについても2022年中に提案する見通しだ。今回の調査結果について、業界団体の再生可能燃料協会は「根本的に欠陥がある」と否定しているが(ブルームバーグ2月14日)、この調査結果が今後、EPAの議論に影響を与える可能性がある。足元では、世界的な原油高によるガソリン価格高騰への対処がバイデン政権の課題となっているが、製油業者に義務付けるバイオディーゼル燃料の混合総量はガソリン価格に影響を与えるため、今後の議論に留意が必要だ。

(宮野慶太)

(米国)

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