ミュンヘンで量子コンピュータ研究開発コンソーシアムが発足

(ドイツ)

ミュンヘン発

2022年02月07日

ドイツ南部のバイエルン州ミュンヘンで1月27日、量子コンピュータの研究開発コンソーシアム「ミュンヘン量子バレー(Munich Quantum Valley:MQV))が発足した(同コンソーシアムプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。発足パートナーは、ミュンヘン工科大学(TUM)、ルートビヒ・マクシミリアン大学ミュンヘン(LMU)、フリードリヒ・アレクサンダー大学エアランゲン・ニュルンベルク(FAU)、バイエルン学士院(BadW)、ドイツ航空宇宙センター(DLR)、フラウンホーファー研究機構(FhG)、マックス・プランク協会(MPG)など。同コンソーシアムは、バイエルン州政府が2020年9月に「新型コロナ禍」の景気対策の1つとして打ち出した、ハイテク戦略「ハイテク・アジェンダ・プラス」(2020年9月24日記事参照)に基づき設立された。

これまでに、既に40以上の大学、研究機関、企業がMQVに集まっており、ドイツ初の国産の量子コンピュータの構築と運用に向けて、現在8つの研究プロジェクトに200人以上の研究者が参加している。また、バイエルン州内各地からMQVに専門家を集め、量子科学研究の深化を図る新規事業も進行中だ。

同日の署名式に出席した、バイエルン州のフーベルト・アイバンガー州経済・開発・エネルギー相は「MQVは産業界、大学、研究者を繋ぐ欧州で比類のない科学・ビジネスネットワークだ。新薬の研究や物流課題の改善、材料開発において、量子コンピュータは重要な役割を果たすだろう」と期待を込めた。

MQVは研究、開発、教育を3本柱に据え、2027年までに「量子コンピューティングおよび量子技術センター(Zentrum für Quantencomputing und Quantentechnologien:ZQQ)」開設を目指すとともに、「量子技術パーク(Quantentechnologiepark)」の設立も計画している。研究開発の現場となるZQQでは、研究プロジェクトへの資金提供サポートも行われる。量子技術パークでは、産学連携を見据えて、スタートアップを含む企業と研究機関が連携の可能性を探る場として共同ラボ施設などの環境が整備される。さらに、MQVは教育にも積極的に取り組むとして、量子技術に加え知的財産や会社経営などについて学ぶコースや起業家・専門職の社会人向けのコースが組まれる予定。

なお、ドイツでは2021年6月、IBM製の量子コンピュータ「IBM Qシステム・ワン」が国内初の量子コンピュータとして稼働している(2021年6月22日記事参照)。

(大河原楓)

(ドイツ)

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