12月のインフレ率は3.6%へと減速

(フィリピン)

マニラ発

2022年01月07日

フィリピン統計庁(PSA)は1月5日、2021年12月の消費者物価指数(CPI)上昇率(インフレ率)は3.6%と発表した(添付資料図参照)。上昇率は2021年内で最も低く、同年で初めて4%を下回った。相対的に価格変動が大きい特定の食品とエネルギーの項目を計算から除いたコアインフレ率は3.0%だった。12月のインフレ率が減速した主な理由として、PSAは食品・非アルコール飲料の上昇率が前年同月比で3.1%と緩やかだったことを挙げている。

2021年通年での平均インフレ率は4.5%で、政府の目標範囲である2~4%を上回った(注1)。一方、2021年通年のコアインフレ率は3.3%で、2020年通年のコアインフレ率3.2%からわずかな加速にとどまった。

12月のインフレ率発表を受け、フィリピン中央銀行(BSP)のベンジャミン・ディオクノ総裁は1月5日、「12月の物価上昇率はBSPが予想していた3.5~4.3%の範囲に収まった。2022、2023年に、政府が目標範囲とする2~4%の中点付近に落ち着く見込み」とコメントした。その上で、「2021年12月中旬にフィリピン中南部(ビサヤ地域およびミンダナオ地域)を通過した大型の台風22号(フィリピン名:オデット)の影響で、近く一時的に食品や必需品の価格が上昇する可能性がある」と指摘し、供給サイドでの問題を起因とする価格上昇圧力を軽減するに当たり、政府はフィリピン国内での十分な食品供給を確保するなど、(金融政策ではなく)直接的に供給面に働き掛ける措置を取っていくべきだ、との見解を明らかにした。

なお、BSPは2020年11月の政策金利引き下げ以降、過去最低の低金利政策を維持している(注2)。

(注1)フィリピン政府は物価上昇率の目標範囲を明示し、物価上昇率が範囲内に収まるように金融政策を運営するインフレターゲットを導入している。政府は2022年から2024年まで、年間のCPI上昇率の目標範囲を2~4%としている。

(注2)政策金利の翌日物借入金利は2.0%、翌日物預金金利は1.5%、翌日物貸出金利は2.5%。

(吉田暁彦、サントス・ガブリエル)

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