欧州議会、マルタ出身のメツォラ議員を議長に選出、女性として20年ぶり

(EU)

ブリュッセル発

2022年01月19日

EUの共同立法機関である欧州議会は1月18日の本会議で、最大会派で中道右派の欧州人民党(EPP)グループの候補ロベルタ・メツォラ第1副議長(マルタ選出)を新議長に選出した。女性の議長は20年ぶり3人目、43歳での議長就任は過去最年少となる。メツォラ新議長は、EUが出資してEU官僚を多く輩出する欧州大学院大学(College of Europe)を卒業後、EUのマルタ政府代表部やEU外務・安全保障政策上級代表の法律担当補佐官などを経て、2013年に欧州議会に初当選。以後、欧州議員を3期務めている。

今回の議長選挙は、1月11日に任期満了直前で死去したダビド=マリア・サッソーリ前議長の後任を決めるもので(2022年1月12日記事参照)、メツォラ新議長の任期は2024年予定の欧州議会選挙までの2年半となる。

幅広い政党グループの支持を受けるも、反中絶で批判も

今回の議長選挙では、メツォラ新議長のほかに、アリス・クンケ議員〔スウェーデン選出、欧州緑の党・欧州自由同盟(GREENS/EFA)グループ〕とシラ・レゴ議員〔スペイン選出、欧州統一左派・北方緑左派連盟(GUE/NGL)グループ〕が立候補したが、メツォラ新議長が1回目の投票で当選に必要な有効投票数の絶対過半数を超える458票を獲得した。秘密投票で実施されるために各議員の投票行動は公表されていないが、現地報道によると、メツォラ新議長は最大会派EPPのほか、第2会派で中道左派の社会・民主主義進歩連盟(S&D)グループと第3会派で中道リベラル派の欧州刷新(Renew Europe)グループに加えて、欧州統合懐疑派の欧州保守改革(ECR)グループなど幅広い支持を得たとみられる。

メツォラ氏は議長選挙前の演説で、欧州グリーン・ディールやデジタル化といったEUの主要政策のほか、EU内で意見の割れている難民政策や、女性のエンパワーメント、人種差別問題、性的少数者などの基本的人権の尊重などでも調整役になると強調した。しかし、同氏は、加盟国で唯一、中絶を厳格に禁止するマルタの立法権を重視する立場から、全加盟国に対して中絶を含めた女性医療の提供を求める決議に反対票を投じており、その姿勢が批判されている。議長選挙後の記者会見でも、この点に質問が集中したが、自身の立場の表明を避け、議長として議会の投票結果を尊重、推進すると述べるにとどまった。

(吉沼啓介)

(EU)

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