WTOパネル、中国による対米報復を承認、米国の相殺関税をめぐり

(米国、中国)

国際経済課

2022年01月31日

米国による中国産品の特定の輸入品に対する相殺関税措置に関するWTOでの紛争(DS437)について、中国の報復措置を認める仲裁判断外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますが1月26日に配布された。中国は今後、年間で最大6億4,512万ドル相当の対米報復関税の賦課などが可能となる。

米国の相殺関税をめぐっては、米商務省が2007~2012年に中国国産の17品目に同税の調査を行ったことに関連して、中国が2012年8月にパネル設置を要請し、WTO審理が開始された。相殺関税の対象には、中国産の複数の管材や太陽光発電パネル、感熱紙、キッチン棚が含まれ、中国が国有企業を通じて補助金を与えているとしていた。その後、WTO上級委員会が2015年1月に中国の主張をおおむね支持する内容の報告を採択し、米国にWTO違反措置の是正を勧告した。しかし、米国の履行がみられないとして、中国が2019年10月に報復措置の承認をWTOに要請した。

報復の範囲について、中国側は当初、年間24億ドル相当を要求したが、審理が進む中で7億8,875万ドルに引き下げた。米国は1億600万ドルを対案としたが、最終的に中国が求める額に近い水準で決着した。認定額の内訳について、大半が非公開な一方、油井管(OCTG)と太陽光発電パネルについては、それぞれ3億6,537万ドルと2,065万ドル相当としている。米国は、審理において中国側の報復額を低減すべく主張を展開したが、いずれの主張も立証不十分とされた。

米国通商代表部(USTR)のアダム・ホッジ報道官は1月26日、今回の仲裁判断に「ひどく失望している」との声明を発表した。今回の判断が上級委員会の誤った解釈によっていると批判し、「中国の非市場経済的な慣習を擁護し、自由で市場誘導型の競争を弱める、WTOのルールと紛争解決手続きを改革する必要性を一層強く感じさせるもの」と述べた。米国は、上級委員会が越権行為により加盟国の権利を侵害しているとして、上級委員の選定を阻んでいる(2020年12月1日記事参照)。一方、中国商務部の高峰報道官は、米国のWTO違反があらためて裏付けられたとして、「(米国の違反行為は)公平かつ公正な国際貿易の環境を損なう」と述べ、米国に是正を求めた(ロイター通信1月26日)。

中国が報復措置を課すことができるのは、WTO紛争解決機関が中国の(報復措置の)申請を正式に承認した後になる。同機関の定例会議は2月28日に予定されている。

(藪恭兵)

(米国、中国)

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