2021年の米小売市場の返品総額は7,610億ドル、市場全体の16.6%に相当

(米国)

ニューヨーク発

2022年01月27日

全米小売業協会(NRF)と米国データ分析会社アプリス・リテールが1月25日に公開した発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、2021年における米国の小売市場の返品総額は7,610億ドル(注1)と推計されており、全体の小売売上高の16.6%に相当する。2020年の返品率(10.6%)から上昇した。2021年のネット通販の平均返品率は20.8%で、近年と同水準だった。

同調査によると、平均的な小売業者では、売上高10億ドルに対して、1億6,600万ドル分の返品が発生するとされる。NRFは2021年の年末商戦期間(11~12月)の小売売上高は過去最高の8,867億ドルに達したとしているが(2022年1月20日記事参照)、小売業者は、この期間に販売された商品の17.8%に当たる1,580億ドルが返品されると予想している。商品別では、自動車部品(19.4%)、アパレル(12.2%)、建材(11.5%)、家庭用品(11.5%)などの返品率が特に高く、小売業者にとっては深刻な課題となっている。

NRFの研究開発・業界分析担当の副社長であるマーク・マシューズ氏は「パンデミック時の持続的な消費者需要によって小売総売上高(の増加)が加速し続ける中、全体の返品率にも影響を与えた」とした。また、アプリス・リテール最高経営責任者(CEO)のスティーブ・プレブル氏は「小売業者は、返品をビジネス戦略の重要な要素として捉え直す必要がある」「今こそ、返品をビジネスのコストと考えるのをやめ、消費者と真に向き合う時として捉えるべきだ」と指摘した(NRFプレスリリース1月25日)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

こうした状況下、米国の大手小売業者はこの返品問題に対応するため、バーチャル試着の技術を導入した。例えば、2021年にはウォルマートがバーチャル試着技術を開発するイスラエル発のスタートアップ、ジーキット(注2、Zeekit)を買収、衣料品大手のギャップもオンライン上で試着技術を提供するドレーパー(注3、Drapr)を買収した。

返品は小売業者への負担の増加のみならず、廃棄にともなう環境負荷の増加としても問題視されている。返品処理ソフトウエアを提供するスタートアップのオプトロ(Optoro)によると、米国内の全小売店へ返品された商品のうち、1年間に約58億ポンド(約26億キロ)が埋め立てられており、各社で今後どう対応するか注目される(「CNET」1月25日)。

(注1)NRFとアプリス・リテールが実施したアンケート調査の結果から算出。実施時期は2021年10月13日~11月15日。回答企業は57社。

(注2)人工知能(AI)技術を活用し、オンライン上で瞬時に衣料品の着せ替えができるサービスを提供。利用者は自身の全身の写真をアップロード、または自身の体型や肌の色に近いモデルの画像を選択することで、購入を検討している商品をバーチャルに試着できる。

(注3)自身の体形を反映した3Dアバターを作成し、バーチャル試着をすることで、自身のスタイルに合った最適な洋服のサイズや着こなしを体験できるサービスを提供。

(樫葉さくら)

(米国)

ビジネス短信 cb4a09750388a09a