サプライチェーンの人権問題を7割近くが認識、2021年度カナダ進出日系企業実態調査

(カナダ)

米州課

2022年01月06日

ジェトロが2021年9月に実施したカナダ進出日系企業実態調査でサプライチェーンの人権問題について聞いたところ、経営課題として認識している企業は68.3%だった。

企業の操業現場における労働、安全衛生など人権に関する問題への関心が世界的に高まる中、総従業員数50人以上の大企業では72.1%が経営課題として認識していたのに対し、50人未満の中小企業では63.8%と、企業規模によって認識に差がみられた。産業別でみると、製造業(64.8%)よりも非製造業(70.8%)の方が認識度は高かった。業種別では、製造業の中では食料品(80.0%)、非製造業では商社・卸売業(88.2%)や販売会社(76.2%)、運輸業(75.0%)で4社に3社以上が経営課題として認識していた。

サプライチェーンにおける人権尊重に関する方針を持つ企業は63.7%だった。業種別では、商社・卸売業(88.3%)や販売会社(84.2%)、一般機械(75.0%)で、4社に3社以上の割合で方針を持っていた。「方針があり、調達先に準拠を求めている」企業は全体の27.3%だった。準拠を求めている調達先はカナダが多く、カナダの調達先に準拠を求めている企業は全体の17.9%だった。他方、「方針があるが、準拠を求めていない」企業は36.4%だったほか、「方針がないが、今後、作成する予定がある」企業は9.9%、「方針がなく、今後も作成する予定もない」企業は26.4%だった。

一方、納品先企業からサプライチェーンにおける人権尊重に関する方針への準拠を求められたことがある企業は28.4%だった。カナダの納品先から求められたことがある企業が22.4%と最多で、日本の納品先から求められた企業の割合は6.9%だった。人権侵害リスクに対する懸念点としては、「貴金属の調達の際の強制労働など」(商社・卸売業)や「児童労働」(化学・医薬)、「調達先のサプライチェーンの上流にある企業で、調達先も把握しきれていないネットワーク」(精密・医療機器)という声が聞かれ、予防策としては、「グループのCSR調達によりアンケートの依頼や現地監査などを実施」(販売会社)という声が上がった。

(滝本慎一郎)

(カナダ)

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