欧州原子力産業団体、原子力をタクソノミーに含める欧州委の方針を歓迎

(EU)

ブリュッセル発

2022年01月12日

欧州委員会が1月1日、持続可能な経済活動を分類する制度である「EUタクソノミー」に合致する企業活動を示す、補完的な委任規則に原子力を含める方針を表明した(2022年1月4日記事参照)ことを受けて、原子力エネルギー産業団体の欧州原子力フォーラム(FORATOM)は1月11日、この決定を歓迎した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

また、同日付で欧州委に対して書簡を送り、(1)原子力はタクソノミー規則における「気候変動の緩和」目標に貢献し、環境に著しい害を及ぼさないエネルギーとして既に認識されているため、再生可能エネルギーなどと同様に扱うべき、(2)高レベル放射性廃棄物などの運用保管期限は、一律2050年とせず、必要に応じて設定すべき、(3)核燃料サイクルもタクソノミー規則における環境目標の「実現を促す活動(enabling activity)」に認定すべき、(4)既存の原子力プラントからの熱や水素の生産、応用技術もタクソノミーに含めるべき、などの提言を行った。

欧州委のブルトン委員、原子力をタクソノミーに含めるべきと発言

FORATOMは、原子力の扱いをめぐって「欧州委は大きなプレッシャーにさらされ」、「政治レベルで非常に複雑な問題であり続けていると認識している」と述べたが、事実、EU加盟国の意見は割れている。そのような中、欧州委のティエリー・ブルトン委員(域内市場・産業・デジタル単一市場担当)は1月9日付のフランスの新聞「ジューナル・デュ・ディマンシュ」のインタビュー記事において、「再生可能エネルギーを中心とするエネルギー移行において原子力は重要な役割を果たす。私は常にタクソノミーから除外することはできないと主張してきた」と発言した。ブルトン委員は「欧州の既存の原子力発電所には2030年までに500億ユーロ、次世代の原子力発電所には2050年までに5,000億ユーロの投資が必要」で、こうした投資を呼び込むためにタクソノミーに原子力を含めることは重要だとした。そして、「原子力は2050年時点でEUの電力源の最低でも15%(現在は約26%)を占めるだろう」との認識を示した。

補完的な委任規則のテキスト案は現在、サステナブル・ファイナンス・プラットフォーム(注)などの専門家へ諮られている。欧州委は1月11日、当初、1月12日までとしていた諮問期間を1月21日まで延長すると発表した。「年末年始の休暇シーズンだったため、時間がさらに必要」との理由だが、加盟国間で意見の相違が大きい話題なだけに、専門家の提言が注目されている。

(注)環境、サステナブル・ファイナンスに関する知見を有する民間企業や団体、シンクタンク、EU諸機関などが参加する諮問機関。

(滝澤祥子)

(EU)

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