中国、輸出管理に関する白書を初めて発表

(中国)

北京発

2022年01月14日

国務院新聞弁公室は2021年12月29日、中国の輸出管理に関する白書(以下、白書)を初めて発表した。中国の輸出管理に関する立場や政策・主張を包括的に紹介したもので、内容は(1)「中国の輸出管理における基本的立場」、(2)「輸出管理の法制度や管理体制を絶えず改善すること」、(3)「輸出管理体系の現代化の持続的推進」、(4)「輸出管理における国際交流・協力の積極的展開」の4部構成となっている。

(1)では、総体的国家安全保障観(注1)を堅持し、国際的な義務・約束を履行し、国際協力・協調を積極的に推進するとした。また、輸出管理措置の乱用に断固反対し、輸出管理が通常の国際科学技術交流や経済貿易協力、グローバルな産業・サプライチェーンの安全で円滑な運営にとって障害となってはならないと主張している。

(2)では、輸出管理法などの法制度の整備状況のほか、デュアルユース品目、軍用品、核などの輸出管理に関する政府部門の体制について紹介した。(3)では、許可管理の合理化や法執行能力の向上、広報や研修などによるコンプライアンス推進などの取り組みについて、(4)では2国間の交流・協力や多国間の対話・協議について記述している(注2)。

商務部の担当者は、企業の輸出コンプライアンス強化に関する政府の取り組みについて、2021年4月にデュアルユース品目輸出事業者の輸出管理内部コンプライアンス体制構築に関する指導意見を改正公布・施行したことを紹介した(注3)。また、今後は企業の輸出管理コンプライアンス能力の向上を促していくとした。

北京大成律師事務所の蔡開明シニアパートナーは、今回発表された白書は主に中国政府の取り組みを記述したものだが、企業にとってはコンプライアンス主体の範囲、輸出事業者に対する要求、包括許可などの面で参考になる点がある、と指摘した。また、企業の対応としては、輸出管理関連の立法や運用の動向を注視して監督管理の要求や執行の重点を把握すること、輸出業務に携わる企業(特に複数品目の輸出に携わる貿易会社や管理品目の輸出に関係することが判明している企業)は自ら、あるいは第三者専門機関に委託して初歩的な輸出管理リスク評価を実施し、既存の関連業務に潜むリスクと関連するリスク管理体制を把握すること、営業やコンプライアンス担当者に輸出管理コンプライアンス研修を実施すること、などを推奨している(「走出去シンクタンク」2022年1月7日)。

(注1)習近平国家主席は、2014年4月に開催した中央国家安全委員会第1回全体会議の重要講話において、総体的国家安全保障観を必ず堅持しなければならないと指摘した。また、政治・国土・軍事・経済・文化・社会・科学技術・情報・生態・資源・核の安全が一体となった国家安全保障システムを構築するとした。

(注2)商務部が2021年12月30日に開設したウェブサイト「中国輸出管理情報網外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」には、輸出管理関連法令や研修用の解説資料、企業のコンプライアンス対応事例などがまとめられている。

(注3)同指導意見とその付属文書であるデュアルユース品目輸出管理内部コンプライアンスガイドラインについては、両用品目輸出事業者の輸出管理内部コンプライアンス体制の構築に関する指導意見の概要PDFファイル(416KB)および実務上のポイントPDFファイル(417KB)を参照。

(小宮昇平)

(中国)

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