EU議長国フランス、欧州の主権強化などを課題に掲げる

(EU、フランス)

ブリュッセル発

2022年01月05日

フランスは1月1日、2022年上半期(1~6月)のEU議長国に就任した。議長国特設ウェブサイト上に1日付で、欧州の主権の強化や、欧州の新しい成長モデルの追求、人間中心の欧州といった理念を議長国として追求していく基本姿勢をあらためて示した。これらの理念は、2021年12月9日にエマニュエル・マクロン大統領がEU議長国就任に先立って発表した声明(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)で提示していたものだ。

EU議長国は半年間の任期で各加盟国が輪番制で担当し、EU理事会(閣僚理事会)の各種会合や大使級の常駐代表委員会(COREPER)などの日程調整と議事進行のほか、他のEU諸機関との調整役などの機能を担う。フランスがEU議長国に就くのは2008年以来となる。また同時に、フランスはチェコ(2022年下半期議長国)、スウェーデン(2023年上半期議長国)とともに、1月~2023年6月の18カ月間、EU理事会の議長団も務める。議長団はEU理事会の中長期的な優先議題を設定する。

フランス大統領選の時期に重なったことで注目度高まる

マクロン大統領はとりわけ欧州の主権強化を中心に据えている。同大統領は12月9日の声明の中で、「議長国としてのゴールを一文にまとめるならば、われわれは欧州の中での協力にとどまらず、世界の中で強い欧州、つまり、完全な主権の下で自らの選択を行い、自らの運命を支配する欧州へと前進することだ」と述べた。具体的な課題としては、デジタルプラットフォームへの規制や、輸入製品に対するカーボンプライシング、最低賃金などの分野を挙げており、既に提出されているデジタルサービス法案(2020年12月22日記事参照)や、デジタル市場法案(2020年12月22日記事参照)、最低賃金の水準に関する指令案(2020年11月2日記事参照)などの法案を成立させるとともに、フランスが導入に積極的な炭素国境調整メカニズムについても設置規則案(2021年7月16日記事参照)の審議を加速させたい意向だ。また、アフリカ諸国との関係強化も優先課題に挙げており、2月17、18日に予定されるEU・アフリカサミットを議長国として取りまとめる。

フランスでは4月10日に大統領選挙の第1回投票、同24日に決選投票を控える。EU議長国の任期中に大統領選が行われることから、フランスの議長国就任はEU内外で関心を集めている。他方、同国の世論では国内経済や治安など内政問題が優先課題の上位に挙がっている。そうした政治日程や国内世論の動向をにらみつつ、マクロン大統領には、議長国としてEUでのフランスの存在感を示し、具体的な成果を出すために難しい差配が求められることになる。

(安田啓)

(EU、フランス)

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