2021年の輸出が過去最高の見込み、政府は輸出促進策を拡大へ

(エジプト)

カイロ発

2022年01月14日

ムスタファ・マドブーリー首相は2022年1月3日に開催された経済閣僚会議において、2021年のエジプトの輸出額(石油・ガスを含まず)が11月末時点で、前年の252億ドルから27%増え、310億ドルに達したと発表した。化学品・肥料、建材、食品、電気・機械製品、農産品、既製服などの輸出増が寄与し、年間輸出額は史上最高の340億ドル程度になる見込みだ。アブドゥルファッターハ・エルシーシ大統領は、政府の輸出拡大支援策(輸出補助金)の効果が大きいとの認識を示し、政策の維持・拡大を指示した。政府は2025年までに輸出額の倍増を目指している。

貿易産業省および財務省は2019年7月、輸出競争力の強化および外国製造業の誘致を目的として、輸出開発基金(EDF)を設立した。それ以来、企業に対して、エジプト国内で生産された製品の輸出価格に応じて補助金を支給している。補助率は、輸出品目、ローカルコンテンツの使用率、輸出額、工場の立地場所(国境沿いの地方都市やスエズ運河経済特区などは高い)、輸出相手国(アフリカ諸国は高い)、同国ブランド使用の有無などによって異なるが、支給額はおおむね輸出価格の10~20%程度になるようだ。同制度は、「新型コロナ禍」で対象品目を追加しつつ継続されている。従来は、資金繰りに悩む企業への支援として、分割払いで支給額の振り込みまで時間がかかっていたが、同制度の導入によって迅速に支払われるようになっている。ネビン・ガメア貿易産業相によると、これまでに1,751社に対して総額13億ドルが支払われている。

エジプト政府は、自由貿易協定(FTA)と輸出補助金の存在により、欧州や中東といった従来の輸出市場に加え、アフリカ域内への輸出も拡大させたい意向で、東南部アフリカ市場共同体(COMESA)や、アフリカ自由貿易圏(AfCFTA)諸国との取引拡大を目指している。エジプト企業にとっては、輸出補助金の支給と域内関税免除の拡大はアフリカ市場開拓において追い風となる。輸出補助制度を利用している国内家電メーカー役員によると、「新型コロナ禍」の影響などで海上輸送費が高騰(2021年12月21日記事参照)する中、周辺国に陸路でも輸送できるエジプトの優位性は高まっている。輸出補助金によって、同社ブランドのアフリカ市場向け低価格帯商品群は、多くの国で中国製品に対する競争力を維持しているという。

(福山豊和)

(エジプト)

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