7割がサプライチェーンの人権を経営課題と認識、2021年度欧州進出日系企業実態調査

(欧州)

欧州ロシアCIS課

2022年01月18日

ジェトロは1月18日、2021年9月3~24日に欧州進出日系企業を対象に実施した、経営実態に関するアンケート調査の結果を発表した〔「2021年度 海外進出日系企業実態調査(欧州編)」参照〕。881社から有効回答を得た(有効回答率60.6%)。その中から、「サプライチェーンにおける人権の問題」について紹介する(注1)。

EUでは、人権デューディリジェンス(注2)の義務化などを含めた、新たな指令案の準備が欧州委員会により進められており、2022年前半に指令案の発表が予定されている。サプライチェーンにおける労働・安全衛生など人権の問題を経営課題として認識している欧州進出日系企業の割合は70.1%に達した。業種別では、繊維、プラスチック製品、非鉄金属で全ての企業が経営課題として認識していた。

サプライチェーンにおける人権に関する方針を定めていると回答した企業は59.5%、うち調達先の企業に対して自社の方針への準拠を求める企業は36.6%となった。業種別にみると、精密機器(85.7%)、電気・電子機器部品(79.2%)、輸送用機器(自動車/二輪車、75.0%)で、調達先企業に準拠を求めている割合が高かった。また、調達先に方針準拠を求める企業に対し、要求する調達先の所在地(複数回答)を聞いたところ、進出所在国が68.5%で最多、日本(52.8%)、所在国以外の欧州域内(23.2%)と続いた。なお、「方針がないが、今後、作成する予定がある」企業は16.0%、「方針がなく、今後も作成する予定もない」企業は24.6%だった。

一方、42.7%の企業が、納品先企業から方針準拠を求められたことがあると回答。要求された納品先の所在地(複数回答)については、回答企業の所在国が33.2%で最も高く、所在国以外の欧州域内は12.2%となった。そのうち、フランス(41.9%)、ドイツ(37.6%)、英国(32.3%)など既に関連法制が整備されている国で高い割合となった。他方、準拠を求められたことがない企業は57.3%を占めた。

EUにおいて、2021年1月から紛争鉱物資源規則の運用が始まった中、具体的な人権リスクとしての懸念点として、児童労働や紛争鉱物に関連するコメントが多く挙げられた。

(注1)「2021年の黒字見込み企業は66%(2022年1月18日記事参照)」、「在英日系企業の約5割が英国への輸入で日英EPAを利用(2022年1月18日記事参照)」、「5割超がグリーン化投資支援策の利用に関心あり(2022年1月18日記事参照)」も参照。

(注2)企業活動に伴う人権への負の影響を調査・評価し、それを防止、停止、軽減させること(2021年11月16日付地域・分析レポート参照)。

(山根夏実)

(欧州)

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