ECDC、欧州の大多数の国でオミクロン株が主流と発表

(EU、ノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタイン)

ブリュッセル発

2022年01月17日

欧州疾病予防管理センター(ECDC)は1月14日、欧州経済領域(EEA)の30カ国(注)全てでオミクロン株が検出されており、域内の公衆衛生上のリスクは「非常に高い」と発表(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。今回の発表によると、2021年12月20日から2022年1月2日までに十分な量のシークエンス解析を実施した、EEA内21カ国におけるオミクロン株の検出率は推定で46.4%で、12月13日の週から倍増している。特に、フィンランド(99.8%)、ベルギー(99.7%)、デンマーク(95.8%)、アイルランド(90.6%)などではオミクロン株の検出率が90%を超えており、これまで主流だったデルタ株からほぼ置き換わっている。東欧諸国を中心とした11カ国ではオミクロン株の検出率はいまだに50%を下回っているものの、19カ国では既に主流になっているとした。

人口に占める新規感染者の割合については、EEA内のほぼ全ての国で増加傾向が続いており、特に15~24歳の増加が顕著となっている。入院率についても、過去2週間で増加している。一方で、集中治療室(ICU)への入室率は安定しており、死亡率に関しても、過去7週間は安定しており、2020年のピーク時と比べて半分以下になっている。初期データをみる限り、オミクロン株に伴う重症化のリスクは、デルタ株に伴うリスクよりも低いと示唆されるとした。

また、欧州医薬品庁(EMA)は1月11日、オミクロン株に対するワクチンの有効性に関する声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。これによると、初期データではあるものの、他の変異株に比べて、オミクロン株に対するワクチンの有効性は低い一方で、ワクチンによる重症化や入院を予防する効果は高いとしており、デルタ株と比較して、オミクロン株による入院リスクは3分の1から半分程度と推定されるとした。

しかし、一方でECDCは、オミクロン株による重症化リスクは、過小評価されている可能性があると指摘している。現在ではワクチン接種済みや感染から回復した住民の割合が高いとして、以前の流行時とは単純に比較できないことや、オミクロン株の感染が比較的に若年層を中心としており、高齢者における重症化に関するデータが不足していることなどを理由として挙げている。

さらに、オミクロン株による重症化リスクが低い場合であっても、ワクチンの有効性が比較的低く、今後も新規感染者の大幅な増加が続くと予想されることから、医療従事者の欠勤などにより、医療体制の逼迫がさらに強まる可能性があり、特にプライマリ・ケア(一次診療)の逼迫は過去の流行を超える可能性があるとして、警鐘を鳴らしている。

(注)EUの全27加盟国とノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタイン。

(吉沼啓介)

(EU、ノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタイン)

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