経済政策プログラムで意見一致も最終合意に向けてIMFと交渉を継続

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2022年01月31日

アルゼンチンのアルベルト・フェルナンデス大統領は1月28日、IMFとの債務再編で合意したと発表した。フェルナンデス大統領は大統領府公式ウェブサイトを通じ、「(IMFとの合意は)私たちの今後の行動に条件を付けるものではなく、私たちは主権を行使し、成長、開発、社会正義の政策を実行することができる」と述べ、財政支出の削減や通貨切り下げなど厳しい条件を伴わないソフトな意見の一致であることを強調した。

IMFとの交渉で、マルティン・グスマン経済相は、IMFと合意した2年半の経済政策プログラムについて、財政収支、財政・金融政策、インフレ、為替政策の4つの分野に取り組むと説明した。

まず、財政収支は、2022年から3年間の基礎的財政収支赤字の目標を、2022年はGDPの2.5%、2023年は1.9%、2024年は0.9%とした。生産性向上や民間部門の活性化、科学技術への投資に集中するなど、メリハリのある財政支出を行う。財政赤字を減らすため、脱税やマネーロンダリングの問題を解決し、徴税を強化する。

財政・金融政策は、中央銀行から国庫への財政ファイナンスを、段階的だが決定的に減少させる。2022年にGDPの1%、2023年に0.6%、2024年にゼロに近づけるとした。2021年の国庫への財政ファイナンスはGDPの3.7%だった。

インフレ問題には、包括的にアプローチする。まず、生産性の低さを解消し、輸出と外貨収入を増やす。経済成長による需要増は輸入を増やすことになり、その結果、外貨準備が減少し、為替の不安定とインフレにつながっているためだ。次に、財政ファイナンス(中銀による国債の引き受け)によるマネタリーベースの増加がインフレにつながっているため、それを解消し、財政の持続可能性を強化する。そして、実質金利をプラスにする金融政策を導入するとともに、インフレ期待を抑えるために国が調整を行う。政府が民間部門と合意して実施している価格統制は物価抑制の役割を果たしており、公的部門と民間部門の協力は、インフレ期待を抑制するために重要だとした。

為替政策は、為替レートの大幅な切り下げは行わず、従来の路線を継続し、現在約380億ドル(グロス)の外貨準備高を2022年に500億ドルまで増やすことを目標とした。投機的な資金の出入りを防ぐ資本取引規制を継続し、直接投資を呼び込む。

また、大統領が述べたとおり、年金生活者の権利を保証し、労働市場改革や国営企業の民営化も行わないとした。今後、IMFとの最終合意に向けて、経済政策プログラムを実現するための具体策の検討を行うことになる。

(西澤裕介)

(アルゼンチン)

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