スーダンのハムドゥーク首相が辞任

(スーダン)

中東アフリカ課

2022年01月07日

スーダンのアブダッラー・ハムドゥーク首相が1月2日、国内の政治的混乱を収拾できなかったとして辞任を発表した。

ハムドゥーク首相は2021年10月25日、軍によって拘束され、一時的にその地位を解かれていたが、11月21日に復職し、民政移管の再開に向けて軍と合意に達していた(2021年12月1日記事参照)。しかし、この合意では、民主化勢力の中心である「自由と変革勢力(FFC)」のメンバーが主権評議会から排除されていた。そのため、FFCを中心とする民主化勢力は、軍に妥協したとしてハムドゥーク首相に批判の目を向けていた。民主化勢力と軍との間で妥協点を見いだすことができず、民主化勢力から支持を得られていなかったことが、今回のハムドゥーク首相の辞任につながったとされる。

ハムドゥーク首相はテレビ演説で、「スーダンが惨禍に陥ることを避けるために、可能な限りの努力をした」と主張した上で、政治的混乱を収めることができなかったことを認め、民主化の実現に向けて「首相を辞任し、他の者に暫定政権のかじ取りを託す」とした。また、同首相は「今、スーダンは危機を迎えており、早急に改善しなければ、国全体の存続をも脅かしかねない」と警告を発し、「最終的な主権者は国民で、軍はその意思に従わなければならない」ことを強調した。

スーダンでは、完全な文民政権の樹立を望む民主化勢力による軍の支配に対する抗議デモが常態化しており、これまでに50人以上の死者が出ている。ハムドゥーク首相の辞任後の2022年1月4日にも、支配力を増す軍に対して民主化勢力による抗議デモが行われた。アブドゥル・ファッターハ・ブルハーン国軍司令官は、速やかに新たな首相を任命する必要があると述べた上で、平和の実現、治安の回復、人々の生活改善、選挙の実施を約束しているが、完全な文民政権の樹立には否定的だ。また、軍では、30年にわたり独裁政権を敷いてきたバシール前大統領の残党勢力が影響力を持っているとされており、先行き不透明な状況が続くとみられる。

(梶原大夢)

(スーダン)

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