首相が拘束から解放、軍と民政移管再開で合意

(スーダン)

カイロ発

2021年12月01日

スーダンで11月21日、軟禁状態にあったアブダッラー・ハムドゥーク首相が解放され、アブドゥル・ファッターハ・ブルハーン国軍司令官と民政移管を再開することで合意した。

同国では民政移管の実現に向けて軍民共同で統治が行われていたが、10月25日に軍がハムドゥーク首相や閣僚などの政府関係者数十人を逮捕・監禁し、権力を掌握していた(2021年10月26日記事参照)。14項目から成る今回の合意では、ハムドゥーク首相の解任取り消しと、拘束されている全ての政治家の解放、憲法の修正(前政権時代に関わりがあり、政治から排除されていた2政党の政治参加の承認)などが宣言された。

一方で、2019年8月に民主化革命を推し進めた「自由と変革勢力(FFC)」との権力分有協定(注)は破棄され、FFCのメンバーは、ブルハーン国軍司令官が議長を務め、首相の任命権を保持する主権評議会から排除された。これに対して、FFCは軍による権力掌握の延長だとして、今回の合意を認めない姿勢を示しており、マルヤム・サーディク・アルマハディ外相などFFCに所属する11人の閣僚が辞表を提出したほか、市民に抗議活動の継続を呼びかけている。軍によるクーデター以降、数週間の抗議デモが続き、少なくとも40人が死亡したが、今回の合意後も、これに反対する民主化勢力の1人が軍による発砲で死亡しており、引き続き治安の悪化が懸念される。

軍によるクーデターに対しては、欧米諸国や世界銀行などが民政移管へのいかなる妨害も許さないとし、数億ドルの経済援助を停止するなど圧力をかけてきた。アフリカ連合(AU)もスーダンのAU加盟停止を宣言したほか、これまで軍寄りとされてきたサウジアラビアやアラブ首長国連邦、アラブ連盟なども軍の行動を非難する声明を出してきた。国際社会と協働して経済の立て直しに尽力してきたハムドゥーク首相の復帰に対して、国際社会が歓迎の声明を出している。

クーデター以降、国内ではインターネットが遮断されていたが、11月18日からほぼ復旧している。利用できない状況が続いていたSNSについても、現在は利用可能となっている。

(注)2019年のバシール政権崩壊後、軍は暫定軍事評議会(TMC)を設置し、新たな軍事政権の樹立を目指したが、民主主義国家を目指すFFCがこれに反発し、暫定統治機関として軍民共同の主権評議会が設置されていた。

(齊木隆太朗、福山豊和)

(スーダン)

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