製造業移転に関する指導意見発表、東部から中西部・東北への移転促進

(中国)

北京発

2022年01月27日

中国・工業情報化部は1月14日、「製造業の秩序ある移転促進に関する指導意見」(工信部聯政法〔2021〕215号)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(以下、意見)を公表した。同意見は、同部や国家発展改革委員会など10部門が、2021年12月25日付で取りまとめたもの。

意見では、2025年までに産業移転政策の実施環境の整備、中西部地域、東北地域の産業移転受け入れ能力の向上、各地域の比較優位の発揮、国内大循環(注1)に立脚しグローバルな資源や各要素を引き付けるための優位性向上、製造業配置の最適化、地域間協力の強化の実現をうたっている。

各項目の主な内容は、労働集約型産業の中西部地域への移転、技術集約型産業の中西部地域・東北地域の中心都市への移転、高エネルギーコスト企業の西部地域への移転、生産性サービス業の製造業との共同移転などとなっている。

具体的には(1)中国国内における産業の段階的移転推進、(2)各地の優位性の発揮を通じた産業移転受け入れ、(3)特殊地域(注2)での特徴ある産業の受け入れ・発展の奨励、(4)中心都市・都市クラスターにおける質を意識したかたちでの産業の受け入れ推進、(5)産業移転の国際協力の推進、(6)新たな産業移転協力モデルの構築、(7)産業移転支援に向けたシステム・メカニズムの整備、(8)産業移転に関連する政策的環境の最適化が挙げられている(添付資料表参照)。

サプライチェーン再構築にも貢献

国務院発展研究センター産業経済研究部の許召元副部長は、意見のポイントについて以下のとおり指摘している(「中国経済時報」2022年1月17日)。

(1)適切な分類・区分をしたうえで、地域間の合理的な分業を促進していく点を重視(労働集約型、技術密集型、高エネルギー消費型等産業ごとに、適切な産業移転の在り方を検討したうえで、産業移転を実施)した点。

(2)移転対象の産業の特色に留意した点。特に、「革命老区」(中華人民共和国成立以前の革命拠点)、辺境地域、資源型地域、旧工業都市などに移転発展させるべき重点産業分野を明確化した点。

(3)それぞれの地域の状況に合致した新たな移転モデルの構築を強調している点。

また、中国国際経済交流中心経済研究部の劉向東副部長は、市場メカニズムに基づく動きに加え、製造業の中西部地域・東北地域への移転を政策的に後押ししていくことは、中国が自らコントロール可能な産業チェーン・サプライチェーンの構築につながるとしている(同)。

(注1)2020年4月の中国共産党中央経済委員会第7回会議で、習近平総書記が「国内大循環を主体とし、国内と国際の2つの双循環が相互に促進する新たな発展局面」として提起したとされる。同年10月に採択された「第14次5カ年(2021~2025年)規画と2035年までの長期目標」では、「国内大循環」について「生産、分配、流通、消費について需要が供給を牽引し、供給が需要を作り出す高レベルでの動的均衡により国民経済の良好な循環を促進する」としている。

(河野円洋)

(中国)

ビジネス短信 3fb6971a9d0b8d14