2022年のGDP成長率予測は2%台、干ばつとインフレが下押し要因に

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2022年01月24日

アルゼンチンの中央銀行は1月7日、民間エコノミストらによる2022年の実質GDP成長率の見通し〔2021年12月時点、集計中央値(REM)〕を2.9%と発表した。世界銀行は2.6%、国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC)の予測は2.2%で、パンデミックの反動で好調だった2021年から一転、2022年の経済成長は低空飛行が見込まれる。

経済成長の下押し要因として、干ばつによる穀物生産量の減少やインフレの高止まりが指摘されている。穀物生産については、特にトウモロコシと大豆生産の減少が懸念されている。ロサリオ穀物取引所(BCR)が1月13日に発表した推計によると、2021/2022年収穫期(2021年3月~2022年2月)のトウモロコシおよび大豆の生産量はそれぞれ4,800万トン、4,000万トン。それまでの推計値からそれぞれ800万トン、900万トン下方修正され、これによる経済損害効果はGDPの1%に相当する48億ドルに達すると試算している。

また、BCRの推計によれば、生産者への直接的な損害は29億3,000万ドルだが、その影響は穀物のサプライチェーンに広く波及するとみられる。具体的には、家畜・食肉のサプライチェーンにおける飼料コストの上昇、穀物の輸送活動の低下とそれに伴う燃油の消費量の減少、農業機械・設備、自動車などの売り上げ減、次の収穫期に向けた投入資材の販売減、保管・包装部門の収入減、収穫作業請負業者の収入減、油糧産業の活動低下、輸出関連サービス事業者の収入減、港湾事業者および船舶事業者の収入減などだ。

さらに、BCRによると、トウモロコシおよび大豆とその副産物の輸出による外貨収入は274億4,400万ドルで、以前の予測から26億7,000万ドル減少した。穀物・油脂の輸出が稼ぐ外貨が生命線のアルゼンチンにとって、これは痛手だ。加えて、国内の生産活動で使用する資本財、中間財の多くを輸入に頼っているため、外貨不足により輸入ができないと生産活動が停滞することになる。

高インフレも、経済成長を下押しする。中銀が集計した現地民間エコノミストらによる2022年のインフレ率見通しは54.8%で、2021年の50.9%を上回る水準だ。実質金利がマイナスの状態が続いており、それによる購買力の低下が消費を下押しする。2022年1月、政府は1,300品目超を対象とした価格統制制度を導入した(2022年1月17日記事参照)が、債務再編交渉中のIMFからは財政赤字の削減を求められており、補助金の削減による公共料金の値上げにつながれば、物価を大きく押し上げることになる。

IMFとの債務再編交渉という不確定要素も加わり、2022年のアルゼンチン経済は厳しい見通しとなりそうだ。

(西澤裕介)

(アルゼンチン)

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