米系企業、ビジネスチャンスを評価するも渡航制限に懸念

(香港)

香港発

2022年01月21日

香港米国商工会議所(AmCham)は1月19日、会員を対象に実施した景況感調査の結果を発表した。調査期間は2021年9月10日から10月8日までで、企業151社、個人111人の計262から回答を得た。香港には引き続き多くのビジネスチャンスがあり見通しは明るいが、国際的な趨勢(すうせい)との乖離が広がっている渡航制限などが、企業や個人のセンチメントに影響を与えている。

ビジネス全体では、過去12カ月間の業績について51%が「好調」と回答し、2020年の収益は2019年比で9%増、好調な業種では27%増となった。また、今後12カ月間の見通しは41%が「楽観的」とし、29%が今後2年間で投資を拡大するとした。業種別では、運輸・物流、金融サービスの好調さが目立った。

外部環境に関して、最も懸念されているのは「渡航制限」で60%、次いで「米中関係」が44%、「新型コロナウイルスの感染拡大」が40%となった。

渡航制限は各方面に影響が出ており、32%が「新規投資の遅れ」、30%が「高級管理職の補充」と回答するとともに、香港への滞在意向についても、個人の53%が「香港を離れる方向」に傾いているとし、企業の33%も同様の回答だった。ただし、香港からの移転を具体的に検討している企業は5%にとどまっており、逆に国際ハブとしての香港の優位性については約8割が変化なし、または競争力ありとし、多くの回答者が高く評価した。なお、香港にとって競合上脅威となる都市としては、80%がシンガポールを挙げ、東京は1%だった。

米中関係に関しては、86%が何らかの影響を受けているとし、見通しの不透明感から53%が今後も悲観的と回答した。

国家安全法の影響については、47%が「従業員の士気への打撃」、45%が「移住による従業員の喪失」を挙げた。また、法の支配については、68%がこの12カ月間で「非常に悪化」「やや悪化」していると回答した。

事業運営に関しては、回答者の51%は香港の情報流通の自由について満足しているものの、42%は今後3年間で制限がかかる可能性があると回答した。また、今後12カ月間の雇用計画については、39%が増員を予定しているが、46%が高度人材の確保に苦労しているとした。広東・香港・マカオ大湾区(GBA)については、60%が既にGBA域内で事業展開しており、41%が今後3年間でさらに事業拡大すると回答した。

調査レポート全文(英語、中国語)は、AmChamウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで閲覧可能。

(渕田裕介)

(香港)

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