欧州道路輸送関連3団体、新ETS案を歓迎も商用車への支援拡充訴える

(EU)

ブリュッセル発

2022年01月17日

欧州委員会が気候政策パッケージ「Fit for 55」(2021年7月15日記事参照)(注)において、道路輸送と建物に対する新たなEU排出量取引制度(EU ETS)を導入する(2021年7月16日記事参照)としている点に関し、欧州自動車工業会(ACEA)、欧州物流貨物協会(CLECAT)と 欧州荷主協会(ESC)は1月14日、EU ETS改正案に関する共同政策提言書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した(同プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。3団体は欧州委の提案を歓迎しつつ、道路輸送に関する温室効果ガス排出枠のオークションから得た収入は同部門に限定して活用、再投資されるべきだとした。

欧州の貨物輸送量は年々増加しており、欧州委やEU加盟国は運輸部門からの温室効果ガス排出削減に向けて鉄道や内陸水運の活用を増やすことを目指している。しかし、3団体は道路輸送が約76%を占める現況がそれで容易に変わることはなく、EUの気候目標達成には代替燃料車を急速に普及させる必要があるとした。しかし、ディーゼル車などと比較してゼロエミッションの商用車の価格は現時点では3.5~5倍高く、充電・充填(じゅうてん)設備の整備も不十分だと課題を指摘。そこで、EU ETS改正案において、(1)道路輸送を対象とした新制度での排出枠オークション収入の最低でも3分の1を、ゼロエミッション商用車の普及や充填設備設置への支援に充てることを加盟国に義務付ける、また(2)運輸部門の脱炭素化に貢献する革新的な技術開発に、EU ETSの収入の一部が活用されているEUの「イノベーション基金」から支援を行うことを義務化することを提案した。また、ドイツでは2021年から建物と運輸部門を対象とする排出量取引制度が導入されているが、こうした加盟国独自およびEUレベルの制度の併存による2重の負担を避けることを求めた。

より出力数が大きい充電・充填設備の増加などが必要と主張

「Fit for 55」では、代替燃料インフラ指令の改正も提案(2021年7月16日記事参照)されている。ACEAは1月11日、大型トラックやバスなど重量車用の充電・充填設備に関するファクトシートPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を公表した(同プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。そして、主要高速道路や都市部の物流拠点への充電設備設置に当たり求められる最低総出力キロワット(kW)数の大幅な引き上げやトラック駐車場への設置の増加、水素ステーションの設置の加速、欧州委が300キロ間隔としていた液体水素充填設備間の間隔の短縮が必要だとした。

(注)「Fit for 55」については、ジェトロ調査レポート「『欧州グリーン・ディール』の最新動向(第1回)政策パッケージ『Fit for 55』の概要と気候・エネルギー目標」(2021年12月)も参照。

(滝澤祥子)

(EU)

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