2021年11月の小売売上高はプラス維持、新型コロナ感染第5波到来を警戒

(香港)

香港発

2022年01月07日

香港特別行政区政府統計処は1月3日、2021年11月の小売売上高(速報値)を前年同月比7.1%増の307億2,300万香港ドル(約4,608億4,500万円、1香港ドル=約15円)と発表した(添付資料図参照)。2021年2月以降10カ月連続で前年同月比プラスとなった。同月の小売売上高のうち、オンライン販売額は前年同月比で27.6%増の34億2,900万香港ドルで、売上高全体の11.2%を占めた。

業態と品目別にみると、増加幅が最も大きかった主な品目は「その他消費財」で、前年同月比18.4%増の60億2,400万香港ドル。この品目には書籍・文房具、薬・化粧品、眼鏡類などが含まれる。また「アパレル製品」も17.9%増の27億9,200万香港ドルと2桁の伸びだった。一方、「スーパーマーケット」は10月には10カ月ぶりにプラスに転じたが、11月は3.2%減の42億2,700万香港ドルと再び減少に転じた(添付資料表参照)。

香港政府の報道官は小売売上高が引き続き増加している要因として「経済の安定的回復と電子消費券の効果」を指摘。また、今後の予測については「香港域内の新型コロナウイルス感染が抑制された状況が続く限りは、経済の回復と労働市場の改善が引き続き小売りセクターを下支えするだろう」との見方を示した。

香港では、域内で新型コロナウイルスのオミクロン型変異株が広がりつつある。香港政府は5日、第5波(注)感染拡大を抑制するため、米国、英国などからの航空機乗り入れ禁止や、飲食店での午後6時以降の店内飲食禁止を含む防疫強化措置を発表した(2022年1月6日記事参照)。

フランスの投資銀行ナティクシスの呉卓殷アジア太平洋地域シニアエコノミストは「第5波が到来した場合、防疫措置の強化によって市民の消費意欲が低下する恐れがある。最も悪い想定では、2022年の小売売上高は2021年と同水準にとどまる」と述べている(「信報」紙1月4日)。

(注)香港では一般的に、2020年1月の新型コロナウイルス感染拡大開始を第1波、同年3月中旬以降の輸入症例拡大を第2波、同年7月中旬以降と11月下旬以降の域内感染拡大をそれぞれ第3波、第4波と呼んでいる。

(野原哲也)

(香港)

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