6割超が営業黒字見込みと回答も販売・調達戦略に変化、海外進出日系企業調査(中南米編)

(メキシコ、ベネズエラ、コロンビア、ペルー、チリ、ブラジル、アルゼンチン)

米州課

2022年01月07日

ジェトロは1月7日、「2021年度 海外進出日系企業実態調査(中南米編)」の結果を発表した。本調査は、2021年8月24日から9月24日にかけて中南米7カ国(メキシコ、ベネズエラ、コロンビア、ペルー、チリ、ブラジル、アルゼンチン)に進出する日系企業714社を対象に行ったもので、509社から有効回答を得た(有効回答率71.3%)。

半数以上が営業利益見込み改善と回答

2021年の営業利益見込みについて、中南米7カ国全体では61.7%が「黒字を見込む」と回答。また、51.3%が「前年と比べ改善」、15.8%が「同悪化」と回答した。DI値(改善から悪化を引いた割合)は中南米全体では35.5%。各国別にみても、ベネズエラを除く全ての国で前回調査(2020年9月実施)に比べ大幅に改善した。

営業利益の改善を見込む最大の理由は、「現地市場での売り上げ増加」だった。売り上げ増加を見込む要因としては、「前年の新型コロナによる影響の反動」との回答が最多だった。一方、悪化を見込む理由としては、回答企業の50.7%が「調達コスト上昇」を挙げた。前回調査では、この割合は15.2%だった。2020年から2021年にかけて調達環境が悪化し、そのことが会社の利益を圧迫したケースが増加した。また、「調達コスト上昇」を利益見通し悪化の理由に挙げた企業の業種が多岐にわたっていることも、今回調査の大きな特徴だ。コンテナ不足、供給制約、輸送コストの上昇のみならず、一部の国では現地通貨下落やインフレが進んだこともその一因とみられる。​

今後の事業は拡大方向も戦略に変化

今後1~2年の事業展開の方向性については、ベネズエラを除く全ての国で「拡大」の割合が前回調査から増加し、「現状維持」の割合は全ての国で減少した。前回調査時は、「新型コロナ禍」で今後の方向性を決めかねていた企業が多かった。

今後の販売戦略では、中南米全体で55.0%が「販売製品を見直す」、49.6%が「販売先を見直す」、47.3%が「販売価格を引き上げる」と回答。いずれも新型コロナウイルスの影響に起因する調達コストの上昇が主たる理由だ。今後の調達戦略については、ブラジルとアルゼンチンでは、日本を含むアジアから米州に調達先を移すとの回答が複数みられた。メキシコでは、日本、米国、中国から、メキシコまたは米国に調達先を変更するとの回答が目立った。メキシコの場合、調達コストの上昇に加え、「米中摩擦」や「USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)」もその理由の1つとして挙げられた。

その他、特にアルゼンチン、ペルー、コロンビア、チリなどでは、各国の不安定な政治・社会情勢が投資環境面のリスクとして捉えられている結果が表れた。

(佐藤輝美)

(メキシコ、ベネズエラ、コロンビア、ペルー、チリ、ブラジル、アルゼンチン)

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