いすゞ自動車、北米向けEVトラックで米カミンズと提携

(米国、日本)

ニューヨーク発

2022年01月26日

いすゞ自動車は1月20日、米国エンジンメーカー大手のカミンズ(本社:インディアナ州、注1)と、北米向け中型バッテリー式電気トラックのプロトタイプの製作で協業することに合意した。いすゞの中型商用トラック「Fシリーズ」にカミンズの電動パワートレイン「PowerDrive6000」を搭載した車両を生産、2022年前半から大手フリート顧客に向けたモニターを行った上で、北米での事業化を検討する見通しだ。

いすゞは2021年1月に大型燃料電池車(FCV)トラックでホンダと共同研究契約を締結。同年3月にはトヨタ、日野自動車との間でトラック分野で電気自動車(EV)と水素を燃料とするFCVを含むCASE(C:相互通信、A:自動運転、S:シェアリング、E:電動化)分野の開発で資本提携を発表。さらに4月に大型トラックの先進技術でボルボと戦略的提携を行うなど、他社との積極的な協業で電動化などへの移行を進めている。今回のカミンズとの提携では、トヨタ、日野との提携で日本とASEAN市場を念頭に置いた小型トラックの電動化技術を開発するのに続き、米国でのEV商用車市場でのシェア確立をにらんだ対応とみられる(注2)。

米国の商用車市場は大きく伸びており、米トラックディーラー協会(ATD)の発表によると、2021年の中型、大型トラックの販売台数は前年比12.7%増の約46万2,000台だった(注3)。一方で、排出量の多いトラックからの温室効果ガス削減も喫緊の課題となっている。商用トラックに関しては、配車センターに設置した充電設備を利用できるため、公共充電施設の拡張を待つ必要がないという利点があることに加え、商品の流通や建設など、都市や地方での利用では、必要なバッテリーが小さく、回生ブレーキ(注4)やさまざまな電動化技術がもたらすメリットが大きいことなどから、乗用自動車に先駆けてEV化が進むとの見方も少なくない。

(注1)トラックエンジンの大手メーカー。トラック部門の二酸化炭素削減を図るため、電動パワートレインなどのEV化、自動化にも力を入れる。

(注2)2020年末にはダイムラー子会社のフレイトライナーが大型EVトラック40台のデモを行い、1回の充電で航続距離250マイルを達成。2022年1月にはボルボも同クラスで275マイルに到達したと公表した。

(注3)中型トラック部門でのいすゞのシェアは、フォード、フレイトライナー、インターナショナル、ドッジに続き第5位。

(注4)EVで、車両を減速する際に放出する運動エネルギーを回収する仕組み。回収したエネルギーで発電機を回し、その抵抗をブレーキとして利用する。

(大原典子)

(米国、日本)

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