脱炭素化に取り組む企業は4割強、2021年度カナダ進出日系企業実態調査

(カナダ)

米州課

2022年01月11日

ジェトロが2021年9月に実施したカナダ進出日系企業実態調査では、環境問題への対応状況についても聞いた。

ジョー・バイデン米国大統領が2021年4月に主催した気候サミットにおいて、各国の温室効果ガス(GHG)の削減目標が表明され、カナダは2030年までの2005年比での温室効果ガス削減量を30%から40~45%に引き上げている(2021年4月23日記事参照)。また、11月に開催された国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26、2021年11月1日記事参照)では、ジャスティン・トルドー首相が石油・ガス部門からの温室効果ガス排出量の上限設定と削減を進めることを発表している(2021年11月2日記事参照)。

このように、連邦政府が環境問題への取り組み方針を示す中で、脱炭素化に取り組んでいると答えた日系企業の割合は43.2%だった。

企業規模別では、総従業員数50人以上の大企業では52.2%が温室効果ガスの排出削減などの脱炭素化に取り組んでいると回答したのに対し、50人未満の中小企業では32.2%だった。産業別では、製造業(51.9%)の方が非製造業(36.6%)よりも取り組む企業の割合は高く、「まだ取り組んでいないが、今後取り組む予定がある」と回答した企業を含めると、製造業の4社に3社以上(75.9%)が環境問題への取り組みに積極的な姿勢を持っていた。脱炭素化に「取り組む予定はない」と回答した企業からは、カナダの事業所では日本本社で製造した商品を販売する代理店機能にとどまっており、「事業所として何か脱炭素化の取り組みをしているわけではない」ものの、会社としては取り組んでいるという声も聞かれた。

脱炭素化に取り組む理由としては、「本社(親会社)からの指示・推奨」が66.7%と最も多く、「進出国・地域の中央・地方政府による規制や優遇措置」(42.0%)、「消費者からの要望」(23.5%)が続いた。また、その取り組み内容としては、「省エネ・省資源化」が58.0%と最大で、「環境に配慮した新製品の開発」(33.3%)、「社会貢献活動の実施」(28.4%)が続いた。

脱炭素化の具体的な取り組み内容としては、「省エネ高効率製品の拡販、省エネ業界団体への協賛」(販売会社)や「夜間電力の蓄電によるピーク時電力の削減」(鉄・非鉄・金属)、「脱炭技術を有する会社への投資の検討」(商社・卸売業)などの声が聞かれた。一方、脱炭素化の取り組みへの課題としては、「新型コロナウイルスの感染拡大による社会や環境に配慮した活動への制限」(食料品)や「脱炭素の収益化」(鉱業・エネルギー)、「商業化の機会が非常に少ない」(商社・卸売業)ことが挙げられた。

(滝本慎一郎)

(カナダ)

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