2021年の貿易収支、内需回復により115億ドルの赤字に転じる

(メキシコ)

メキシコ発

2022年01月28日

メキシコ国立統計地理情報院(INEGI)の1月27日の発表によると、2021年の貿易収支は新型コロナウイルス感染状況の改善などにより内需が回復したことで輸入が伸長し、114億9,106万ドルの赤字となった(添付資料表参照)。新型コロナ感染拡大が始まった2020年は国内外の需要減や連邦政府による操業規制から生産活動が低迷し、輸入額が大幅に減少したことから、過去最高の貿易黒字を記録した(2021年2月1日記事参照)。しかし、構造的にメキシコは、部品・材料など中間材や機械など資本財を輸入に依存しているほか、原油輸出国だがガソリンなど石油精製品の多くも輸入していることなどから、輸入額が輸出額を上回ることが多く、感染拡大前の貿易収支は赤字基調だった。

2021年の輸出総額は4,942億2,450万ドルで、前年比18.5%増加した。内訳をみると、石油輸出が289億2,560万ドルと65.4%増加した。原油価格の上昇が寄与した。鉱産物も29.0%増加した。農牧産品も前年に引き続き好調で、7.6%の増となった。一方、工業品は4,360億7,590万ドルと16.7%増加したものの、自動車産業に限ると13.8%の増加にとどまり、2021年12月単月では前年同月比4.6%減少している。2020年は新型コロナ感染拡大で「衛生上の緊急事態宣言」が出され、自動車産業を含む多くの製造業が約2カ月間にわたる生産活動の停止を余儀なくされたことから、2021年は自動車生産の回復が期待されていたが、長引く半導体不足の問題から、生産台数が前年比2%減の297万9,276台にとどまったことが輸出額の伸びに影響したとみられる。

輸入総額は5,057億1,560万ドルで前年比32.1%の大幅増となった。2019年の輸入総額と比較しても、11.1%の増加だ。原油価格の上昇などから石油製品の輸入額が71.5%増加したほか、消費財が34.9%増、中間財も32.7%増といずれも大きく増加した。資本財も21.8%増加した。他方で、中間財と資本財の輸入増は、メキシコ国内の製造業の生産活動が前年に比べて活発化していることを示唆しているため、2022年前半の輸出と景気にとっては明るい材料だと言えそうだ。

なお、輸出総額と輸入総額を合計した往復貿易額は9,999億4,012万ドルと1兆ドルに迫り、過去最高額となった。

(松本杏奈)

(メキシコ)

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