ペルー港湾公社、ボリビアと商業協定を締結、利活用への期待値は低く

(ペルー、ボリビア、チリ)

リマ発

2021年12月23日

ペルー港湾公社(ENAPU)は12月6日のプレスリリースで、ボリビア港湾サービス管理局(ASP-B)との間で、ENAPUが運営するペルー南部モケグア州のイロ港でのボリビア向けコンテナの輸出入取引に関する特定商業協定を締結したと発表した。同協定により、ボリビア向け貨物はイロ港の利用料金の30%割引が適用されるほか、同港に寄港するドイツの海運会社ハパッグ・ロイド(HAPAG-LLOYD)の荷受料5%割引や最長120日間のイロ港倉庫の無料利用権などの恩典が与えられる。ASP-Bのダンテ・フスティニアーノ専務理事は、今回の協定は2021年6月3日に両公社間で締結された「相互運営管理協定」の枠組みの一環で、イロ港を通じたボリビアの貿易の活性化と従来の利用港以外の選択肢を強化することを目的としていると説明した。

一方で、ジェトロが独自にボリビア企業に行ったヒアリング調査によると、イロ港はボリビアのサンタクルス県から1,346キロ離れており、従来利用しているチリ北部のアリカ港(1,140キロ)からよりも遠い上に、イロ港からの陸路は治安上の問題も多いという。また、同港の利用により競争力のある海運コストとなるためには、少なくとも年間輸出入量が200万トン以上の必要があるものの、近年〔7万83トン(2019年)、5万8,289トン(2020年)、7万9,672トン(2021年1~6月)〕の実績では、その足元にも及ばないという。

イロ港唯一の桟橋は長さ302メートル、幅27メートルで、理論上は4船舶(小型から中型2隻に大型2隻)が接岸できることになっているが、桟橋の幅が狭いため同時に2隻以上の作業は難しく、さらに水深も5メートルから最も深いところでも10メートルと限られている。クレーンのつり上げ荷重も100トンに満たず、老朽化しているため、ほとんどのボリビア輸出企業は同港に関心がないという。

ボリビアは1904年にチリと締結した「平和と友好条約」により、戦後補償としてアントファガスタ港とアリカ港を通じた貿易の自由通関権を与えられており、両港における倉庫も輸入で1年間、輸出で60日間の無償利用が保証されている。ASP-Bは両港に事務局を構えており、輸入貨物に限って全ての管理を任されているが、技術的なサポートがない上に、同公社を通じて港湾費用を支払うため、実際の費用の不透明感に対する不満が後を絶たないという。

(設楽隆裕)

(ペルー、ボリビア、チリ)

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