通貨リラ安が進む中、エルドアン大統領は低金利政策を継続

(トルコ)

イスタンブール発

2021年12月06日

レジェップ・タイップ・エルドアン大統領は、通貨トルコ・リラ安が進む現状を前に、11月22日に「リラ安で国際競争力を引き上げることで、輸出を促進し、トルコの経常収支を黒字に転換させる。低金利により投資環境が改善され、結果として生産能力が高まる。長期的には国内の失業と物価上昇が抑えられ、国民がより豊かになる」と発言した。

トルコ中央銀行は、政策金利(1週間物レポ金利)が消費者物価指数を下回らないことを基準としていたが、エルドアン大統領が「インフレや物価高騰は結果で、その原因は高金利だ」とするエルドガノミクスとも呼ばれる方針を推進したため、さらなる利下げを行い、実質金利をマイナスとした。中銀は9月以降の政策金利を、同月の消費者物価指数(19.89%)を下回る水準としており、9月は19%から18%、10月は16%、11月は15%と3カ月連続の引き下げとなった(2021年10月25日記事参照)。

このマイナス金利策によって、トルコ・リラは9月の1ドル=8.76リラから、12月3日時点で13.82リラの水準まで下落した。現地報道では、為替レートの不安定な状況により、中間財などを輸入に依存する多くのセクターで、調達コストの上昇懸念が高まったとしている。また、輸入価格の上昇で国内での販売価格の設定が困難となり、アップルなど多くの企業が一時的に販売を停止するという動きも見られた。

政府は、トルコの新しい経済政策は輸出業者に国際的な競争力を与えるとしているが、一部の専門家からは事態を懸念する意見もみられる。例えば、「物価の上昇、リラの下落、外貨預金の増加、物価が再び上昇という悪循環を招く」「リラ安とマイナス金利により、輸出企業と建設業は利益を得るが、他のセクターと国民は打撃を受ける。投資家も不安定な状況下では、ローンを組むなどの投資はしなくなる」などの見解も出ている。

こうした懸念に対し、エルドアン大統領は11月29日、ジャーナリストの質問に答えるかたちで、「昨今の経済的根拠のない為替変動による物価上昇の問題に対して、投資、雇用、生産を優先することで解決していく。私は常に『金利が原因で、インフレは結果だ』と考えてきたため、低金利政策に関する妥協はしない。次の選挙前までに、インフレがどこまで低下するかが分かるだろう」と述べたと報じられている。

(エライ・バシュ)

(トルコ)

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