モラビエツキ首相がインフレ対策発表、施行に向けて手続き開始

(ポーランド)

ワルシャワ発

2021年12月06日

ポーランドのマテウシュ・モラビエツキ首相は11月30日、同25日に公表したインフレの影響を緩和するための施策「インフレ防止シールド」の施行に向けた手続きを開始したと発表した。具体的には、同施策に関連する物品税法の改正案を閣議決定した。「インフレ防止シールド」には12月20日からの施策も盛り込まれており、政府は関連する法律の改正案を下院でも速やかに可決させ、施行を急ぎたい考えだ。

「インフレ防止シールド」を発表した背景にあるのは、世界的な燃料や食糧の価格高騰を受けたインフレ率の上昇だ。多くの国が急激な物価上昇に苦しんでいる。ポーランドも例外ではなく、中央統計局(GUS)によると、ポーランドの11月の消費者物価指数(CPI、速報値)は前年同月比7.7%と過去20年間で最高値となった。モラビエツキ首相は「物価上昇を緩和するため、また、国民が今後数カ月あるいは数四半期を乗り切れるよう、われわれは全力を尽くす。必要に応じて将来的にさらなる措置を講じることも辞さない」とコメントした。なお、政府によると、「インフレ防止シールド」により家計支出を合計で100億ズロチ(約2,800億円、1ズロチ=約28円)抑えることが可能とされている。

主な施策は以下のとおり。

  • ガスの付加価値税(VAT)の税率を23%から8%に引き下げ。
  • 電気に対する物品税の撤廃とVATの税率を23%から8%に引き下げ。
  • 地域熱供給(注)にかかる費用のVATの税率を23%から8%に引き下げることによる家賃の軽減。
  • 燃料価格の引き下げ(2022年5月末まで物品税を引き下げ、燃料販売税の控除を導入)。
  • 世帯の人数や収入に応じた低・中所得向けの補助金の交付。

PKO銀行によると、「インフレ防止シールド」は2022年1月のインフレ率を1.5ポイント低下させ、2022年の年平均インフレ率は6.8%から6.4%に下がると予測している。一方で、ING銀行は同施策によって2022年第1四半期(1~3月)のインフレ率のピークを遅らせることはできるが、第2四半期(4~6月)のインフレ率は上昇するとみている。VATの税率引き下げによりエネルギー価格のインフレへの影響を一時的に軽減することはできるものの、その後のインフレ率上昇の見通しに影響を与えるとまではいかないと分析している。

(注)地域ごとに熱供給のパイプランがあり、それに接続することで住宅に暖気が送られる。家賃に暖房費が含まれる場合には、地域熱供給にかかる費用のVATの税率を引き下げると家賃も下がることになる。

(今西遼香、ニーナ・ルッベ)

(ポーランド)

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