2022年のGDP成長率予測を3.0%に下方修正、経済回復に遅れ

(スイス)

ジュネーブ発

2021年12月13日

スイス連邦経済省経済事務局(SECO)は12月9日の発表(プレスリリース)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、2021年の実質GDP成長率予測(注:スポーツイベントが現在の予定どおり開催された効果を織り込んだ数値)を前回から0.1ポイント上方修正し、3.3%とした(添付資料表参照)。一方で、供給制約や新型コロナウイルス対策措置の再強化により世界経済の回復の遅れが見込まれることから、2022年の予測を前回の3.4%から3.0%に下方修正した。

スイス経済は、新型コロナウイルス対策措置が2021年半ばまで段階的に緩和されたことにより力強く回復し、夏にはGDPが「新型コロナ危機」以前の2019年第4四半期(10~12月)の水準を上回った。しかし、現在、世界規模の供給制約や輸送能力不足により価格が高騰しており、かつ、新型コロナウイルスをめぐる先行き不透明感から、各国で規制を強化する動きが広がっている。

このような状況を背景にSECOは、今冬季の世界とスイス経済の回復ペースは減速すると予想し、2022年のGDP成長率予測(スポーツイベント調整後)を前回の3.4%から3.0%に下方修正した。一方で、大規模なロックダウンなどの厳しい公衆衛生措置が導入されない限り、景気の停滞には至らないとし、経済回復の妨げとなる要因が徐々に解消され、スイス経済が個人消費や投資、輸出の増加に牽引されて力強く回復するとの見方を示した。失業率については、年平均2.4%に低下すると予測、インフレ率については、エネルギー価格や原材料価格の上昇により今冬季にピークに達するものの、年平均1.1%の緩やかな上昇になると見込む。

SECOはまた、2022年後半には内需と輸出の伸びが徐々に減少して回復基調は一服、経済活動が正常化するとの見方を示し、2023年のGDP成長率予測を2.0%とした。これに伴い、失業率は2.3%まで低下し、インフレ率も0.7%に落ち着くとした。

SECOは経済下振れリスクとして不確実性の高まりを指摘する。新型コロナウイルスの新たな変異株のオミクロン株など感染拡大の新たなリスクに対して、厳しい規制措置が導入される場合には、経済の回復ペースは大幅に減速する。また、供給制約の長期化により、インフレ圧力が長期金利の上昇を伴う持続的な価格上昇をもたらす場合にも、景気回復は鈍化する。こうしたシナリオの下では、不動産部門におけるリスクと同様に、政府や企業の債務拡大リスクも大幅に高まるとした。さらに、中国の不動産部門のリスクにも言及し、中国の内需に大きな影響を与えうる不動産危機と世界経済への影響の大きさについて指摘した。他方、2020年春以降に活動制限などにより積み上がった貯蓄が今後、個人消費に回ることが予想され、スイスや他の先進国の経済回復が予測以上に力強くなる可能性もあるとした。

(注)スイスには、国際オリンピック委員会(IOC)、国際サッカー連盟(FIFA)、欧州サッカー連盟(UEFA)など主要国際イベントの本部があるため、イベント開催年に放映権収入がGDPを押し上げ、翌年にマイナスに作用するのが通例。このため、SECOはこの影響を除いた調整値を別途算出している。

(竹原ベナルディス真紀子)

(スイス)

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