カーン首相、アフガン人道支援を呼びかけ

(パキスタン)

カラチ発

2021年12月24日

イスラム協力機構(OIC)外相会議が12月19日、ホスト国パキスタンの首都イスラマバードで、機構加盟国(57カ国)の代表団、国際機関や日本を含む外交団などが参加して開催され、アフガニスタンの人道支援について議論が行われた。イムラン・カーン首相は演説で「世界が今、行動を取らなければ、アフガニスタンは人の手による世界最大の危機となる恐れがある」(「ドーン」紙12月21日)と強い危機感を表明し、国際社会にアフガニスタンへの人道支援を呼びかけた。また、首相は米国に対し、「ワシントンはタリバンと4,000万人のアフガン市民を切り離して扱わなければならない」と語った(同紙)。

アフガニスタンでイスラム主義組織タリバンが8月に政権を奪取して以来、パキスタン政府は、タリバンが諸部族などを含んだ包摂的な政府となることや、女性の権利を守ることなどを一貫して主張してきた(2021年8月26日記事参照)。また、アフガン経済の崩壊とそれに伴う難民流出やテロ拡散を防ぐ見地から、国際社会によるタリバン政権の承認を待たずに、人道支援を進めてきた経緯がある。

パキスタン政府やOICからは12月23日時点で外相会議の公式声明などは公表されていないが、各紙の報道をまとめると、会議では「人道信託基金」と「食糧安全保障プログラム」の設立に合意し、基金についてはイスラム開発銀行によって2022年3月までに運用されることとなった(「ビジネス・レコーダー」紙12月20日)。

カーン首相は19日、サウジアラビアのファイサル・ビン・ファーラン・アル・サウド外相との会談でも、「パキスタンは人道支援組織を通じたアフガニスタン支援を継続すると約束しており、小麦5万トン、医療品、冬季避難用品など50億パキスタン・ルピー(約32億円、1パキスタン・ルピー=約0.64円)相当の現物支援を行う」と語った。

米国のアントニー・ブリンケン国務長官は22日、パキスタンがこの会議をホストして、アフガン人道支援への協力を続けることに感謝するとツイートした。

アフガニスタンでは、最低気温がマイナス10度をも下回る厳冬期を迎えている。国連開発計画(UNDP)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、約4,000万人のアフガン人口の約7割が貧困状態にある。OICが人道支援をアフガニスタンの人々に迅速に届けられるかが今後の焦点となる。

(山口和紀)

(パキスタン)

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