パキスタン政府、アフガニスタンの政治的安定を期待
(パキスタン、アフガニスタン)
カラチ発
2021年08月26日
イスラム主義組織タリバンがアフガニスタンの首都カブールを制圧した翌8月16日、パキスタンのイムラン・カーン首相は主要閣僚と軍トップで構成される国家安全保障委員会を開催。アフガニスタン国内の全部族参加による包摂的な政治安定を望むこと、その実現のために国際社会と協調すること、不介入の原則を堅持することの3点を政府の基本方針として確認した。
時を同じくして、アフガニスタンの議会議長、元外相、主要政党代表らで構成される政府代表団(タリバンの戦闘員の多くを占めるパシュトゥーン人以外で構成)が8月16日、首都イスラマバードでパキスタン政府と会合を持ち、新政府に加わる道を探るとした。このことについて、主要紙「ドーン」は「タリバンの挑戦」と題する社説で、「これは非常に意義深い。全ての部族と会派が合同する幅広い代表から成る政府をつくることに合意できたら、タリバンとアフガンリーダーの利益になる」と高く評価した。
政府は、反パキスタンの姿勢を示す過激組織「パキスタン・タリバン運動(TTP)」のテロによる国内治安悪化を懸念する。シャー・マフムード・クレシ外相は8月23日、「今後の新政府が、TTPによるテロを強く懸念するパキスタン政府に配慮することを望む」と語った(「ビジネス・レコーダー」紙8月24日)。
今後の治安情勢について、松田邦紀駐パキスタン日本大使はジェトロの取材に答えて、「短期的には政府当局は、TTP戦闘員が難民に紛れて国内に侵入することを恐れているが、(現時点では)難民は急増しておらず、現状治安悪化をさほど懸念していない」と語った。
一方、地域情勢に詳しい国際政治経済学者でザビスト大学のマンズール・アリ・イスラン教授は「タリバンが解放したTTP捕虜の1人である元幹部は、世界中のムジャヒディン(イスラム教戦士)を団結させる時が来たと発言した。これはTTPがパキスタンでのテロ再開を計画していることを示す」と、情勢の変化によっては国内の治安が悪化する可能性をジェトロに示唆した。
総合商社のカラチ支店長は、現場にいる者の肌感覚による個人的見解としながらも、「今まで国内に目を向けていたタリバンが、今後は近隣諸国に手を出す余裕が出てくるだろうし、パキスタンの治安が悪くなる懸念はあるかと思う。治安が悪化すれば、やはりパキスタンでのビジネスは積極的にはなれない方向に振れる」とし、タリバンの動きによってはビジネスに影響が出る懸念を示した。
(山口和紀)
(パキスタン、アフガニスタン)
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