米年末商戦、最初の5日間の買い物客数は前年を下回るも、平年並み

(米国)

ニューヨーク発

2021年12月02日

全米小売業協会(NRF)は11月30日、米国の年末商戦の始まりとされる、感謝祭(11月25日)から翌週月曜日(11月29日)までの5日間の買い物客数を発表した。実店舗とオンラインを合わせた買い物客数は1億7,980万人となり、2020年の1億8,640万人から減少したものの、直近4年間の水準(1億7,910万人)とほぼ同水準だった。

2021年は、新型コロナウイルス感染対策の入店規制などもあった前年に対し、ワクチンの普及により、実店舗への客足が増えた。感謝祭から5日間の実店舗への来客数は1億490万人に上り、2020年の9,230万人を上回ったものの、2019年比では15%減と、新型コロナウイルス感染拡大以前の水準(1億2,400万人)には及ばなかった。5日間のうち、来客数が最も多かった日は感謝祭翌日の「ブラックフライデー」で、1日の買い物客数は6,650万人に達した。また、ブラックフライデー翌日の土曜日は5,100万人となった。新型コロナウイルス感染への懸念は依然として高いものの、それに伴うサプライチェーンの混乱による配送遅延を回避するために消費者は店舗を訪れたとみられる。

一方、オンラインでの購入者数は前年同期比12%減となる1億2,780万人だった。米国アドビ・アナリティクスによると、ブラックフライデーのオンライン売上高は前年比1.3%減の89億ドル、オンライン販売のセール日とされる「サイバーマンデー」は1.4%減の107億ドルといずれも前年より減少した。同社の首席アナリスト、ビベク・パンディヤ氏は「ブラックフライデーでは、過去数年の成長トレンドが初めて反転した」と述べ、「消費者は最高の買い物をするため、年末商戦期間の早い段階に商品を購入し、買い物のタイミングを柔軟に変えるなど、戦略的にプレゼントを購入している」と指摘した(「CNET」11月27日、注1)。

消費データを追跡する米国センサーマティック・ソリューションズのブライアン・フィールド氏は「サプライチェーンの遅延による影響が懸念される中、消費者が店舗での購買機会を最大限に活用することが今後、期待される。消費者は、オンラインでの購入や店舗での受け取り、カーブサイド・ピックアップ(注2)など(企業が提供する)ユニファイド・コマース(注3)のオプションと組み合わせることで、ホリデーショッピングを最も便利な時間と場所で済ませることができる」と述べた。

なお、NRFは年末商戦期間(11~12月)全体の小売売上高について、前年同期比8.5~10.5%増の8,434億~8,590億ドルになるとの見通しを発表している(2021年10月29日記事参照)。

(注1)NRFが買い物客を対象に実施したアンケート調査によると、2021年は多くの小売業者が10月からセールイベントを開始した中で、約半数(49%)が前倒しで実施されたホリデーセールやプロモーションを利用したと回答した。また、回答者の84%は既にホリデーシーズンの買い物を始めており、平均して半分以上(52%)の買い物を終えていると回答している。さらに、地元企業を支援することは多くの消費者にとって重要な要素で、回答者71%が「スモールビジネスサタデー」に合わせて買い物をしていると述べている。スモールビジネスサタデーとは、ブラックフライデー翌日に設定された、地元の個人経営や中小の小売店での買い物が奨励される日。

(注2)オンラインで注文した商品を、店舗の駐車場で降車することなく受け取ることができるサービス。

(注3)顧客や商品について収集したデータを単一のプラットフォームに統合し、顧客体験の向上に利用する販売戦略。

(樫葉さくら)

(米国)

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