ユニコーン予備軍の最新リスト発表

(中国)

広州発

2021年12月13日

シンクタンク「胡潤研究院」(以下、胡潤)と中国のアクセラレーター「天九共享」は12月2日、「2021天九共享・胡潤中国ガゼル(注1)企業リスト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」(Tojoy・Hurun China Gazelles 2021、以下、同リスト)を共同発表した。

中国版「フォーブス」とも称される胡潤は、中国の長者番付「胡潤百富」の発行元として知られている。2019年からは国内外ユニコーン企業のリストを作成・発表するなど、スタートアップ動向分析においても定評があり、中国において大きな影響力を有している。今回の連携相手で、ユニコーンインキュベーター・アクセラレーターとしても知られる天九共享は、胡潤との連携も活用しながら、双方の強みを生かし、ガゼル企業を3年以内にユニコーン企業へ育てていく方針を示している。

同リストは、中国国内のガゼル企業を独自にリストアップしたもので、今回で4回目の発表となる。2000年以降に創業し、非上場で、今後3年以内にユニコーン企業(注2)になる高い可能性を有するという3つの条件を満たす171の企業が選出された。選出された企業の平均設立年数は6年、創業者の平均年齢は42歳という。掲載企業数は2019年比でほぼ倍増、2020年比で約70%増と増加が続いている。2020年版に掲載された企業のうち、ポジティブ要因(上場などのエグジットや資金調達によってユニコーン企業へと成長するなど)により、2021年版に不掲載となった企業は29社だった。

リストに掲載された企業を分野別でみると、バイオテクノロジー(41社)、企業向けサービス(27社)、人工知能(15社)、医療機器を含む健康テクノロジー(14社)、Eコマース(11社)、半導体(10社)、メディア・エンターテインメント(8社)、ロボティクス(6社)の順となっている。胡潤の創設者であるルパート・フーゲワーフ氏は「アフターコロナ時代において、バイオテクノロジーと健康テクノロジーを包括する大健康産業(注3)の発展が著しく、今後ユニコーン企業を輩出する最大の産業になるだろう」と述べた。

なお、2020年に多数リストアップされていた教育関連企業は、小中学生向けの学校外での学習負担を削減する「双減」(注4)政策の影響を受け、リストから姿を消した。

掲載企業を都市別にみると、掲載企業の約8割が上海市、北京市、深セン市、杭州市、蘇州市に集積している。深セン市からは、正浩科技(アウトドアや非常時に利用できる大容量ポータル電源の製造企業)、普渡科技(配膳や案内などの商用サービスロボットメーカー)、AutoX(自動運転AIプラットフォーム開発企業)、太若科技(AR/MRグラスといったMRを実現するための設備開発企業)など、日本進出済み、もしくは日本企業との協業を発表しているスタートアップもリスト入りした。

同リストと同時に発表された「2021年中国ガゼル企業の育成都市ランキング」において、深センは上海、北京に次ぐ3位に入った。地元政府の企業誘致・支援政策、資金・人材・技術等のリソースなどが高く評価されている。

写真 共同発表の様子(ジェトロ撮影)

共同発表の様子(ジェトロ撮影)

(注1)胡潤の定義によると、2000年以降に創業し、今後3年以内にユニコーン企業になる高い可能性を有する非上場企業。

(注2)胡潤の定義によると、2000年以降に創業し、評価額が10億ドル以上の非上場企業。

(注3)ヘルスケア・医療・医薬・病後のリハビリ・看護・老後ケアなど人間の生・老・病・死にまつわる諸領域を包括的に捉える概念。

(注4)中国政府が2021年7月に打ち出した「義務教育段階の学生の宿題と学外教育の負担を軽減するための意見」に基づいた政策で、小中学生向けの学内科目の学習塾の新設禁止、既存の学習塾の非営利化など具体的な措置が含まれる。

(曹歓)

(中国)

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