日独交流160周年でジェトロとGTAIが「日独イノベーション・イニシアチブ160」キックオフセミナー開催

(ドイツ、日本)

ベルリン発

2021年12月23日

ジェトロは12月16日、ドイツ貿易・投資振興機関(GTAI)とともに、1861年の日独修好通商条約から160周年を迎えたことを機に、「日独イノベーション・イニシアチブ160」キックオフセミナーをベルリン日独センター(注)からの中継によるハイブリッド形式で開催した。気候変動問題や少子高齢化、新型コロナウイルス、SDGsをはじめとする地球規模の社会課題解決に向けたイノベーション創出のため、既に日本とドイツのイノベーション協業で実績のある企業・団体が先行事例を紹介した。

冒頭、佐々木伸彦ジェトロ理事長とロバート・ヘルマンGTAI総裁は、スタートアップを含む日独企業の交流の促進を表明し、両国の各産業支援団体に協力を呼びかけた。経済・外交の立場から、吉川ゆうみ経済産業省経済産業大臣政務官や、アンドレアス・ニコリン連邦経済・気候保護省アジア担当次長、柳秀直・駐ドイツ日本大使、クレーメンス・フォン=ゲッツェ駐日ドイツ大使が両国共通の価値観に基づき、企業の交流史などを紹介し、脱炭素やデジタル化への貢献を目指す本イニシアチブへの期待を寄せた。

基調講演として、ドイツ化学大手BASF取締役兼German Council for Sustainable Development(ドイツ政府に対して持続可能性の戦略を助言する有識者委員会)委員のデュボーグ沙織氏が政府や企業、投資家などの間で、価値観やビジネスモデルの変化などが生まれていることに言及し、同社と日本の化学産業のエコシステムとの連携事例を紹介した。日本側からは、光産業創成大学院大学の瀧口義浩学長がフォトニクス分野の浜松とドイツのイエナなど、日本とドイツの地域間の中小企業や研究機関を含むイノベーション交流を紹介した。

先行事例のベストプラクティスとして、ユニコーンとなったことが同日発表されたベルリン発スタートアップのInfarm-Indoor Urban Farmingの日本法人代表取締役社長の平石郁生氏がスーパーマーケットなどの店内で使用できる地産地消の「スマート栽培ユニット」を紹介したほか、欧州で競争力のあるベルリンのエコシステムがいまだ日本で知られていない点を指摘した。

次に、VENSYSジャパン代表取締役社長、VENSYSエナジー営業副部長のミヒャエル・ケラー氏は2021年9月に岡山県津山市で風力発電所建設プロジェクトに参入した事例を紹介した。

連邦経済・気候保護省発の12のデジタルハブの1つとして化学・ヘルスケア分野のスタートアップ支援を手掛ける5-HT Digital HUB Chemistry & Health Ludwigshafen、エコシステム部長(スカウティング、プログラム担当)のマルコ・R・マイアー氏は、ダイキン工業を含む日本企業とスタートアップの連携支援、スタートアップ向けブートキャンプなどについて説明した。

各事例に対する講評として、在日ドイツ商工会議所(AHK Japan)専務理事のマークゥス・シュールマン氏は、急速な高齢化とグローバル化、資源の制約、地球環境保護など将来の重要な課題に対して、日独技術連携を促進し、解決していく重要性を述べた。

最後に、本セミナーで共同司会を務めた和爾俊樹(わに・としき)ジェトロ・ベルリン事務所長とアヒム・ハウクGTAI東アジア課長が日独のイノベーション創出に向け、ジェトロとGTAIが合意した以下の協力内容について共同で発表した。

1.ビジネス・ネットワーキング・イベントの共同開催

2.日独のイノベーション成功事例のプレーアップ(Best Practices of the Year)

  • 大企業、中堅・中小企業、団体
  • 持続性、独創性、イノベーション
  • 気候変動、少子高齢化、新型コロナウイルス、SDGsなどの地球規模の課題解決に貢献するもの
写真 ベルリン日独センターより中継(ジェトロ撮影)

ベルリン日独センターより中継(ジェトロ撮影)

(注)同センターは、1985年に当時の中曽根康弘首相とドイツのヘルムート・コール首相のイニシアチブで「知的出会いの場」として創設。

(小菅宏幸)

(ドイツ、日本)

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