欧州産業連盟、4年ぶりのWTO閣僚会議を前に改革など求める提言書発表

(EU)

ブリュッセル発

2021年11月29日

ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)は11月24日、ジュネーブで同月30日~12月3日に開催が予定されていた第12回WTO閣僚会議(注1)を前に、欧州ビジネス界からの提言書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した。

ビジネスヨーロッパは4年ぶりの閣僚会議を「WTOにとって正念場だ」と位置づけ、閣僚会議を経てWTOがより強力で機能的な組織になるには、現代社会のニーズに対応した貿易ルールの策定と適用が求められるとした。そのためにはWTO全加盟国が具体的な成果を出し、時に必要な妥協をすることが重要だとした。会議の成功には、課題となっている事項に優先順位をつけ、現実的に結果を出すことにつなげることがカギとなるとした。その上で、ルールに基づく多国間貿易システムの再構築へ向けて傾注すべき分野として、(1)WTO改革、(2)貿易と保健、(3)2017年の共同声明イニシアチブ(注2)に基づく取り組みの前進、(4)漁業補助金交渉の妥結を挙げ、提言を行った。

閣僚会議の機会捉え、WTO改革などの進展求める

「WTO改革」については、閣僚会議で議題や作業計画を定めて早急に進めるべきだと主張。WTOルールブックを改定し、企業側の実情をより反映させるために、WTOと産業界の間のより組織的な対話が必要だとした。

「貿易と保健」分野では、医薬品・医療用品のサプライチェーンや生産に影響を与える貿易・規制の障壁を取り払うなど、総体的なアプローチで野心的なイニシアチブを立ち上げるべきだとした。また、WTO加盟国が取り組むべき課題としてワクチンの生産・供給を挙げ、開発や企業間などの協力を進めるには知的財産の保護が重要な役割を果たすと指摘。WTOの知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)に従った解決策の模索を求めた。

共同イニシアチブ関連では、電子商取引について、国境を越えたデータ流通や情報技術協定(ITA)加盟国の拡張といった課題について、加盟国は「閣僚宣言」で交渉を早期に妥結させる意欲と誓約を示し、特に電子的な送信への関税不賦課を恒久化すべきだとした。

このほか、「貿易と環境」についても言及し、プラスチックや化石燃料への補助金などについて、さまざまな多国間イニシアチブでの成果をグローバルレベルの取り組みへとつなげる交渉の開始に合意し、次回のWTO閣僚会議までの妥結を目指すべきだとした。

(注1)WTOは11月26日、新型コロナウイルスの新たな変異株(オミクロン株)拡大の懸念を受けて、第12回WTO閣僚会議の開催延期を決定した。

(注2)2017年に開催された第11回WTO閣僚会議で採択された、(1)電子商取引、(2)投資円滑化、(3)中小零細企業(MSMEs)、(4)国内サービス規制の4分野における、それぞれの複数の有志国が発出した共同声明に基づく取り組み。

(滝澤祥子)

(EU)

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