ニューサウスウェールズ州現代奴隷法、2022年1月1日施行

(オーストラリア)

シドニー発

2021年11月24日

オーストラリア最大都市シドニーを州都とするニューサウスウェールズ(NSW)州政府は11月19日、同州の現代奴隷法が2022年1月1日に発効すると発表した。国内で現代奴隷に関する独立した州法を持つのはNSW州が初めてとなる。

同国では、連邦政府による現代奴隷法(Modern Slavery Act 2018)が2019年1月1日に施行された。同法は、被害者搾取の手段として威圧や脅迫、だましなどを用い、人の自由を侵害する現代奴隷(modern slavery)に対応するもので、国内で事業を行い、傘下の事業体を含む年間収益が1億オーストラリア・ドル(約83億円、豪ドル、1豪ドル=約83円)を超える企業などを対象に、サプライチェーンとそのオペレーションにおける現代奴隷のリスクを評価・分析し、報告することを義務付けている(2021年6月30日付地域・分析レポート参照)。提出された報告書は、内務省のデータベース(The Modern Slavery Statements Register外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)上で一般公開されており、日系企業による報告書も確認することができる(2021年10月7日付地域・分析レポート参照)。

2018年6月にNSW州議会で可決された同州の現代奴隷法は、年間収益が5,000万豪ドルを超える企業を対象に報告を義務付け、報告義務を順守しなかった場合には罰則を科すもので、連邦法より踏み込んだ内容だった。しかし、連邦法と調和させるための改正作業などによって、これまで未施行となっていた。改正後は、州法に基づく報告義務を撤廃し、年間収益が5,000万豪ドルから1億豪ドルまでの企業については、連邦法に基づく自主的な報告を奨励するにとどめた。これに対して、オーストラリア人権弁護士会(ALHR)は「現代奴隷の撲滅に向けた取り組みを弱める可能性がある」として懸念を表明している。

(住裕美)

(オーストラリア)

ビジネス短信 89587f689c40ade6