全国賃金評議会、業績回復の事業主へ減給分の優先回復を勧告

(シンガポール)

シンガポール発

2021年11月02日

シンガポールの政労使代表で構成する全国賃金評議会(NWC)は10月29日に発表した2021/2022年度(2021年12月1日~2022年11月30日)の賃金ガイドラインで、新型コロナウイルス禍から回復、または回復途上にある事業主に対し、事業の回復程度に伴い、減額した従業員の賃金の回復を優先的に取り組むよう勧告した。

NWCは人材省や全国労働組合会議(NTUC)、シンガポール国家雇用者連合(SNEF)、外国商工会議所などの代表で構成し、景気や雇用市場の動向、経済見通しなどを勘案して、その年の賃金改定の指針となるガイドラインを毎年発表している。NWCは今回の勧告の中で、2021年第1~3四半期(1~9月)に国民(永住権者を含む)の雇用が伸び、失業率も引き続き低下したものの、国内の雇用市場の回復が部門ごとに異なっており、そういう状況が当面続くと指摘した。

NWCは部門ごとに異なる国内景気と雇用状況を踏まえ、新型コロナ過から回復したか、回復途上にある事業主に対し、事業が回復するとともに適切な時期に、(1)基本給、可変給(業績に応じて変動する給与)の減額分の回復、(2)労働時間削減や一時解雇、無給休暇など給与関連のコスト削減の停止、(3)業績の良い事業主については業績に応じた給与、可変級の引き上げ、(4)手当削減などコスト削減の停止をするよう勧告した〔優先順位は(1)~(4)の順〕。また、NWCは新型コロナ禍で打撃を受けている事業主に対し、(1)事業変革や人材改革に取り組むための政府支援の活用、(2)可能な限り給与以外でのコスト削減と年間給与補助(AWS)の支給に向けた努力、(3)そのほかに方策がなく業績の見通しが厳しい場合に、組合の協力を得た上で解雇を回避するための給与削減を求めた。

さらに、NWCは総月給2,000シンガポール・ドル(約17万円、Sドル、1Sドル=約85円)以下の低所得者について、総賃金を4.5~5.7%、または70~90Sドルのいずれか高い方に引き上げるよう勧告した。NWCは今後、低賃金労働者に関する勧告について、これまでの基本給ではなく、各種手当を含めた総月給で勧告する方針を示した。総月給2,000Sドル以下の労働者は、同国のフルタイムの国民(永住権者を含む)の約20%に相当する。

NWCの賃金ガイドラインは、幹部、専門職、技術者、一般社員と全ての労働者に対し、組合・非組合を問わずに適用される。人材省は同日、NWCの勧告を受け入れた。同勧告の全文は人材省ウェブサイトPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を参照。

(本田智津絵)

(シンガポール)

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