9月の小売売上高、引き続きプラスも先行きは不透明

(香港)

香港発

2021年11月05日

香港特別行政区政府(以下、香港政府)統計処は11月2日、2021年9月の小売売上高(速報値)を前年同月比7.3%増の279億8,500万香港ドル(約3,920億円、1香港ドル=約14円)と発表した(添付資料図参照)。2021年2月以降、8カ月連続で前年同月比プラスの伸びを維持している。

なお、同月の小売売上高のうち、全体の8.0%を占めるオンライン販売額は前年同月比で30.5%増の22億5,100万香港ドルとなった。

業態および品目別にみると、増加幅が最も大きかった主な品目は、「耐久消費財」で、前年同月比29.2%増の54億400万香港ドル。また、「宝飾、時計および高級贈答品」も16.2%増の31億7,900香港ドルで増加が目立った。一方、「スーパーマーケット」は2021年1月以降9カ月連続で前年同月比マイナスとなり、9月は4.9%減の44億6,100万香港ドル。「百貨店」も11.6%減の26億3,700万香港ドルとなった(添付資料表参照)。

香港政府報道官は、小売売上高が引き続き増加している要因について「一部は電子消費券の効果によるもの」と指摘。また、今後の予測については「香港域内では新型コロナウイルスの感染は抑制され、雇用および所得の改善がみられる。加えて、電子消費券の効果が、短期的には小売セクターを下支えするだろう。しかし、香港のインバウンド観光業が停止した状態であることが、引き続き(小売売上高の)回復の制約要因となるだろう」とコメントした。

上海商業銀行の首席研究官である林俊泓氏は「電子消費券が使用された後も、これまでの小売売上高の伸びが持続するかは疑問だ。8月以降は、株式市場の下落もあり、資産効果もネガティブに働いている。香港域外との往来が再開して観光客が戻らない限り、個人消費は完全には回復しないだろう」と述べた(「サウスチャイナ・モーニングポスト」紙11月3日)。

(野原哲也)

(香港)

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