ベトナム、10月の生産活動に回復の兆し

(ベトナム)

ハノイ発

2021年11月05日

英国の調査会社IHSマークイットが11月1日に発表したベトナムの10月の製造業購買担当者景気指数(PMI、注1)は52.1で、前月の40.2から上昇した(添付資料図参照)。指数が50を上回るのは5カ月ぶりで、景気回復の兆しが見えてきた。

ベトナムでは4月末以降の新型コロナウイルス感染拡大で、地域ごとに従業員の通勤が制限されるなど生産現場に影響が出ていたが、状況は改善に向かっている。ハノイ市やダナン市では、9月に新型コロナウイルス感染対策に伴う工場稼働の制限が緩和された。ホーチミン市をはじめとする南部の省・市でも10月から工場稼働の制限が緩和された。そのため、生産を再開する企業や稼働率を上げる企業が相次ぎ、生産量や新規受注、購買活動が持ち直した。

一方、稼働率の向上には課題が残る。従業員の通勤を再開するためには、各従業員の状況を確認して操業計画を作成する必要があるなど、準備に時間を要する。制限緩和後も全国の感染者は3,000~5,000人前後で推移しており、通勤再開によって工場内で感染者が出るリスクも高まる。そのため、10月中は従業員が寝泊まりして働く工場隔離を継続する日系企業も複数見られた。また、生産復調の機運が高まる一方、地方からの出稼ぎ労働者の中には帰郷した人も多く、雇用の回復が遅れている。さらに、世界的な輸送費上昇や原材料不足が生産コストの上昇を招いており、企業の負担となっている。

鉱工業生産指数も改善の兆し

ベトナム統計総局が発表した10月の鉱工業生産指数(IIP、注2)は151.5だった。前月比は6.9%上昇し、2カ月連続のプラスとなった。一方、前年同月比は1.6%低下し、4カ月連続のマイナスとなった。

業種別にみると、電子部品(前期比:3.5%上昇、前年同期比:13.3%上昇)やアパレル製品(15.1%上昇、10.3%上昇)が生産を伸ばしている。一方、家電製品(13.6%上昇、34.6%低下)、二輪車(5.9%上昇、28.2%低下)、家具(14.5%上昇、11.2%低下)は10月に持ち直したものの、前年よりは低い水準にある。また、自動車(2.0%低下、30.8%低下)は回復に時間がかかっている。

(注1)製造業の購買責任者を対象に、生産高や新規受注、在庫水準、雇用状況、価格などの状況を評価する指数。0から100の間で変動し、50を超えると「前月比で改善や増加」、50未満は「前月比で悪化や減少」を表す。

(注2)鉱工業生産指数は、鉱工業の生産を評価する指数で、2015年の生産量を基準(100)に算出される。

(庄浩充)

(ベトナム)

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