南部のサイバー産業クラスターにマスターカード、富士通などが相次ぎ進出

(イスラエル)

テルアビブ発

2021年11月25日

イスラエル政府が南部の主要都市ベエルシェバに設置しているサイバー産業クラスターに、企業が相次いで進出している。11月21日付「タイムズ・オブ・イスラエル」紙は、決済サービス大手のマスターカードとイタリアのエネルギー系大手のエネルが共同で、ベエルシェバに設置された新しいイノベーションラボの運営を始めると報じた。同ラボは、イスラエルのイノベーション庁と国家サイバー庁、財務省が共同で設置し、2019年に行われた入札でマスターカードとエネルが運営権を落札した。主にAPI(Application Programming Interface、注)に関するセキュリティー、脆弱(ぜいじゃく)性管理、ランサムウエア対策、デジタルIDと認証技術、バーチャルペイメント、詐欺防止技術などを対象とするという。

同ラボでは、既に公募で選抜した5社のイスラエルスタートアップと6カ月間の実証実験プログラムを開始しており、その後さらに第2弾のグループを選抜し、同様の活動を行う予定。また、マスターカード、エネルともにイスラエル国内に拠点を既に有しており、エネルは2016年にテルアビブに設置したラボでモノのインターネット(IoT)、サイバーセキュリティー、eモビリティー、エネルギー貯蔵などの分野でイスラエルスタートアップとの協業を模索している。

ベエルシェバでは、富士通も11月16日付で同地に拠点を置くベングリオン・ネゲブ大学傘下にある産学連携窓口を担うBGNテクノロジーズと、3年間の共同研究に関する契約を締結し、「富士通サイバーセキュリティー・センター・オブ・エクセレンス・イスラエル」を設置したと発表している。人工知能(AI)モデルや学習データなどへのセキュリティー脅威が引き起こすさまざまな課題を解決する技術を研究開発し、AIを実装したシステムやソフトウエアにおけるセキュリティー高度化を目指すという。

ベエルシェバのサイバー産業クラスターを管轄する政府機関の国家サイバー庁は、ジェトロの取材(11月8日)に対して、通信、自動車関連、宇宙産業などにおける日本企業のサイバー産業クラスターへの進出を歓迎するとしている。今回の富士通の事例は、隣接するベングリオン大学との連携だが、有望なイスラエルスタートアップの紹介や、両者による実証実験などの促進を中心とした政府機関のサポート体制が整っているという。

(注)ソフトウエアコンポーネント同士が互いに情報をやりとりするのに使用するインタフェースの仕様。

(吉田暢)

(イスラエル)

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