欧州会計検査院、加盟国のEU予算執行の大幅な遅れ指摘

(EU)

ブリュッセル発

2021年11月08日

EUの監査機関である欧州会計検査院(ECA)は10月26日、2020年度のEU予算の執行に関する年次報告書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した。この報告書はEU予算の歳入・歳出に対する毎年の監査結果をまとめたもの。ECAは2020年のEU予算の執行で多くの誤りなどが確認されたとして、不適正意見を2年連続で発出した。

また、予算・財務管理について、一定の条件を満たした上で執行することが法的に約束された予算額と、実際の執行額との差額の累計が2020年末までに3,032億ユーロに達したことに言及した。その主な原因として、EU加盟国に割り当てられたEU予算額に対して、加盟国が政策を実施し執行した予算の割合が低い点を挙げた。特に、EU域内の経済格差の是正などを目的に加盟国に提供する欧州地域開発基金や結束基金などの欧州構造投資基金(ESIF)の実施の遅れにより、前期(2014~2020年)の中期予算計画(MFF:多年度財政枠組み)の未執行分の累計は、前々期(2007~2013年)のMFFよりも7%ほど上がったとしている。2020年末までに加盟国に対して4,650億ユーロのESIF予算が割り当てられているが、45%の2,090億ユーロが未執行となっている。ESIFの執行率に関しては、加盟国間格差が大きく、フィンランドへの割当分は79%が執行済みでの一方で、イタリア、クロアチア、スペインではそれぞれ45%ほどしか執行していない。また、イタリア、スペイン、ポーランドの3カ国で全体の未執行分の約40%を占めている。

加盟国の欧州構造投資基金の今後の実施にさらなる遅れが出る可能性も

欧州委の長期予測によると、新型コロナウイルス対策の予算である復興基金を除く、2021~2027年の現行MFFで、法的に約束されている予算額と執行予定額の差額は非常に小さいとして、累積の差額は現状のレベルを維持するとしている。他方、ECAは、加盟国の政策実施の遅れが発生した場合は、累積の差額は今後も増える可能性があるとしている。特に現行MFFでは、ESIF予算の執行に必要な法整備が大幅に遅れたことから、ESIFの実施開始にも遅れが出るとみられている。また、現行のEU予算は、通常のMFFに復興基金が加わったことで、前期MFFと比べて2倍近くに増加している(2020年9月23日付地域・分析レポート参照)。そうした中で、加盟国は今後数年間で前期MFFの未執行分、現行MFFの割当分、復興基金の割当分を同時に活用しなければならず、行政上の負担が大幅に増加すると予想される。こうした状況から、ECAは加盟国のESIF実施のさらなる遅れや、不十分な予算管理につながる可能性があると指摘している。

(吉沼啓介)

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