イスラエル、2050年の人口予測を発表

(イスラエル)

テルアビブ発

2021年11月29日

11月22日付「ハアレツ」紙は、イスラエルの国家経済会議が、2050年までの人口予測を発表したと報じた。イスラエルの総人口は、2050年までに現在の920万人から70%増の約1,568万人になるという。全体の3分の1強に当たる560万人が19歳以下の若年層で占められると予測されているが、同時に65歳以上の高齢者人口も120万人から237万人に増加する。

超正統派人口がユダヤ人人口の3分の1弱を占める

予測によれば、総人口の80%(1,250万人)は引き続きユダヤ人が占めるが、そのうちユダヤ教超正統派の人口が380万人と、ユダヤ人人口の3分の1弱、全人口の24%(現在は12.6%)と大幅に増加する(注)。これに対して、アラブ人は現在200万人程度の人口が324万人となり、引き続き全人口の2割程度を占める。

初めて国内の地域別の人口予測を発表

既に人口が集中している中央地域(テルアビブやエルサレムを含む)は、現在の380万人から600万人と引き続き増加する。中でも、テルアビブ都市圏は148万人から226万人となる。

予測では、同時に、南部地域での急速な人口増加を示している。例えば、地中海沿岸のアシュケロンでは75万3,000人から113万人に、南部内陸部の主要都市ベエルシェバ都市圏では160万人まで増加するという。南部地域の人口が増加する主な要因としては、テルアビブ都市圏への通勤通学を想定した鉄道などの公共交通機関の整備や、企業誘致のための税制優遇、イスラエル国防軍の主要施設の移転などが挙げられている。同時に、一定程度のユダヤ教超正統派人口の移転についても言及があり、超正統派のための新たな都市建設がその引き金になっているという。

一方、北部地域では、相対的にアラブ人人口の割合が多く、北部のユダヤ人・アラブ人混住の最大都市ハイファにおいても、南部ほどの増加予測とはなっていない。また、ヨルダン川西岸地区におけるユダヤ人人口も、45万8,000人から最大で110万人に倍増すると予測されている。

大都市圏を中心に増え続ける人口に対して、若い人たちを主な対象とした新たな住宅供給や、都市内および都市間を結ぶ公共交通機関の整備などが政府の喫緊の課題となる一方で、同時に増える高齢者人口に対しても、バリアフリーの住宅や道路、乗り降りしやすい公共交通機関、そして介護サービスの充実も求められるようになると推測される。

(注)ユダヤ教では、旧約聖書で「産めよ、増えよ、地に満ちよ」との記載があるように、子供は多いほど良いとする考え方があり、厳格に宗教戒律を守った生活を送る超正統派コミュニティにおいては、避妊や中絶が禁止されているといわれている。

(吉田暢)

(イスラエル)

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