5G周波数帯の入札結果を発表、2022年利用開始へ一歩前進

(ブラジル、中国)

サンパウロ発

2021年11月29日

ブラジル電気通信庁(ANATEL)は、11月4、5日に第5世代移動通信システム(5G)周波数帯の入札を実施した(2021年10月22日記事参照)。いわゆる電波オークションと呼ばれる入札で、落札額は合計で472億レアル(約9,912億円、1レアル=約21円)となった。そのうち48億レアル(約983億円)が国庫収入となり、残りは各周波数帯の落札者に対して課された義務(国内の通信環境の向上のための諸事業)を果たすために使用される。

各周波数帯は単一の応札者に落札されるのではなく、複数の応札者が落札できるよう入札の区画を細分化している。今回の入札で落札された区画は全体の85%に相当し、落札企業は11社。うち、6社が新規参入企業だった(注1)。

入札対象の4つの周波数帯〔700メガヘルツ(MHz)、2.3ギガヘルツ(GHz)、3.5GHz、26GHz〕のうち、3.5GHzの周波数帯は一部既存の設備が転用できるとして、落札者には2022年7月までに全州都で5Gネットワークを稼働させる義務が課されている。同周波数帯の入札対象区画のうち、ブラジル全土でのサービス提供を可能にするための区画を落札したのは、ブラジル通信大手のクラロ(Claro、アメリカ・モビル・メキシコの傘下)、ビボ(Vivo、スペイン・テレフォニカとポルトガル・テレコムの合弁企業)、チン(TIM、イタリア・テレコムのブラジル子会社)となった。その他、3.5GHzの周波数帯で地方向けにサービスを提供する区画は、南部パラナ州を本拠とするセルコンテルや北東部セアラ州を本拠とするブリザネットなど、大手ではない企業が落札した。

一方、26GHzの周波数帯では不落となる区画が多かった。入札全体で、落札されなかった区画のうち95%が26GHz周波数帯のものだった。11月5日付の現地雑誌「エザーメ」によると、同周波数帯はデータ通信速度が速く、接続可能なデバイス数も多いためIoT(モノのインターネット)分野での使用に適しているが、サービスを安定供給するための設備コストが高いという。ファビオ・ファリア通信相はANATEL公式サイトにおいて、落札されなかった区画は近いうちに再入札を実施する可能性を示した。

なお、11月17日付現地紙「フォーリャ」によると、中国通信機器メーカー華為技術(ファーウェイ)は通信機器やネットワークソリューションなどの提供を目指して、クラロ、ビボ、チンを含め、その他落札者との交渉を開始したという。製品やサービス価格は競合他社と大差がない一方で、維持管理費が他社と比べて40%程度安いことを強みとしているという。

ファーウェイの機器提供に関しては、3.5GHzの周波数帯で政府専用ネットワークを設置する場合については、安全性が不十分という理由で制限される可能性があるが、一般消費者向けのネットワークについては制限が課せられていない(注2)。

(注1)入札参加企業は15社だった。例えば、ブラジルのプライベートエクイティ会社パトリアインベストメント傘下でワイヤレス技術を展開するWinityが700MHzの一区画を落札した。

(注2)政府専用ネットワークについては、5G入札の手続きを規制する2021年1月29日付の通信省令第1,924号に記載のある「政府専用ネットワークを設置する際には、技術調達先となる関連企業はブラジルのガバナンス基準に従う必要がある」という部分の解釈によって、制限される可能性がある。

(エルナニ・オダ)

(ブラジル、中国)

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