10月の米消費者物価、前年同月比6.2%上昇、6%台は31年ぶり
(米国)
ニューヨーク発
2021年11月12日
米国労働省が11月10日に発表した10月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比6.2%上昇、変動の大きいエネルギーと食料品を除いたコア指数は同4.6%上昇となった。民間予想はそれぞれ5.9%、4.0%だった。1990年12月以来、31年ぶりの高い伸びとなった。前月比でも消費者物価指数、コア指数はそれぞれ0.9%、0.6%上昇と、前月の伸び(それぞれ0.4%、0.2%上昇)を大幅に上回った(添付資料図参照)。
品目別では、家庭用食品が前年同月比5.4%と伸びが加速したほか、ガソリンが同49.6%上昇と大幅な伸びを示している。財をみると、一時落ち着いていた中古車が同26.4%上昇、前月比で見ても2.5%上昇となっていることに加え、新車も前年同月比9.8%上昇、前月比1.4%上昇と、伸びが加速している。サービスでは、住居費が前年同月比3.5%上昇と伸びが加速している一方、航空運賃は前年同月比4.6%下落、前月比0.7%下落と軟調な結果となっている(添付資料表参照)。
川上の物価動向をみても、高止まりが続いている。11月9日に労働省が発表した卸売物価指数は前年同月比8.6%上昇と前月から変わらず、2010年11月以降で最高の値となっている。現在の消費者物価水準でも生産者が輸送費や人件費などのコスト増を十分に価格転嫁できていない状況だ。今後の年末商戦の需要の高まりなどを考えると、足元で価格下落要因が見当たらない。
経済専門局のCNBCが10月に実施した世論調査では、経済の懸念材料として、新型コロナウイルス感染のパンデミックに起因した物価上昇を挙げた割合が前回8月調査よりも16ポイント上昇しており(10月21日)、米国民の間でもインフレに対する懸念が高まっている。
今回のCPI発表を受けて、ジョー・バイデン大統領は11月10日、「インフレは米国民の財布を直撃するものであり、この傾向を変えることは私にとって最優先事項だ」との声明を発表し、対策に取り組む姿勢を示した。関連して、エネルギー省のジェニファー・グランホルム長官は、ガソリン価格の高騰を踏まえた、エネルギー省が保有する石油の戦略備蓄の放出について、バイデン大統領が「(選択肢の1つとして)検討しており、(大統領から)今後さらに発言があるだろう」と述べており(ブルームバーグ11月5日)、バイデン政権がどのようなインフレ対策を取るのかが注目される。
(宮野慶太)
(米国)
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