米ヒューストン拠点の産学官コンソーシアム、大規模液化水素貯蔵の実現可能性実証へ

(米国)

ヒューストン発

2021年10月20日

オランダの石油大手ロイヤル・ダッチ・シェルの子会社シェル・インターナショナル・エクスプロレーション・アンド・プロダクション(本社:米国テキサス州ヒューストン)主導の産学官コンソーシアムは10月13日、国際貿易用途の大規模な液化水素貯蔵事業に取り組むことを発表した。この事業は手頃な価格の低炭素エネルギー商品として水素の世界的な商用化を促進する可能性を追求する。

ヒューストンを拠点とする同コンソーシアムは、シェルをはじめ、米エンジニアリング大手マクダーモット・インターナショナル、米航空宇宙局(NASA)、ヒューストン大学などが含まれている。コンソーシアムは大規模な2万~10万立方メートルの液化水素タンクを用いて輸出入ターミナルで実現可能性と価格競争力を実証する。米国エネルギー省からの600万ドルの助成に、シェルとマクダーモットそれぞれによる300万ドルの資金投入をあわせ、計1,200万ドルの予算規模となる。「ヒューストン・ビジネス・ジャーナル」紙によると、プロジェクトは3年間実施される予定だ(10月18日)。

このプロジェクトは、米国が世界のエネルギーリーダーとなれるよう、液化水素ベースの国際サプライチェーン開発を加速させ、ブルー水素(注1)とグリーン水素(注2)の輸出機会の商用化を促進することを目的としている。このプロジェクトの下で開発される絶縁技術や極低温試験装置、熱モデルによって幾つかの液化水素技術の適用に広範な利益をもたらす可能性があるという。

このコンソーシアムは、大規模な液化水素タンクについて革新的で経済的に実現可能な概念設計を協力して開発する。さらに、商用規模の設計に向けて、商用に見合うよう規模を縮小したタンクの設計および建造にも取り組む。

この取り組みにより、クリーンな水素コストを削減し、エネルギートランジションを加速させることに貢献することが期待される。

(注1)化石燃料を原料とする。ただし、製造過程で発生する二酸化炭素(CO2)を回収・貯留(CCS)または回収・有効利用・貯留(CCUS)を行い、有効利用または地中に貯留する。

(注2)再生可能エネルギーを利用して製造される水素。

(沖本憲司)

(米国)

ビジネス短信 fa58ea2caa260be3