米金融安定監視評議会、金融システムに及ぼす気候変動リスクへの対処方針について報告書を公表

(米国、欧州)

ニューヨーク発

2021年10月26日

米国金融安定監視評議会(FSOC)は10月21日、気候変動リスクが金融システムに及ぼす影響とその対処方針についての報告書を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。ジョー・バイデン米国大統領は、財務省に対して、FSOCメンバーと協力して、金融システムに対する気候変動リスクの評価やその対応策などを分析した報告書の提出を求める大統領令に署名しており(2021年5月24日記事参照)、今回の報告書はそれを踏まえて作成された。

FSOCは、金融システムの安定性に対する新たなリスクに対応し、市場規律を促進することを旨としている会議体。メンバーは議長を務める財務長官をはじめ、証券取引委員会(SEC)などの連邦や州の金融監督官庁のほか、大統領によって任命された官庁から独立した保険専門家を含む15人のメンバーから構成されている。

報告書では、2020年に気候変動がもたらした損害額は950億ドルに達したとともに、過去20年間のトレンドでみて、気候変動を起因とする災害が確実に多くなっていることを指摘。今後も気候変動による災害が続き、保険料や信用コストがさらに上昇すれば、その負担の多くは経済的に困窮する人々に及ぶことが懸念されるとして、早期の政策対応や企業などによる対応が重要としている。その具体的な対応策として、気候変動リスクについてのデータが現状不足していることを指摘し、企業などは温暖化ガス排出量などの気候変動に関する情報開示を充実させるべきとしている。また、そうした新たな情報などに基づいて、災害など気候変動が金融機関の財務にどのような影響があるか、担当官庁がシナリオ分析を行うことが必要であることなどを提言している。

10月31日から11月12日まで、英国で国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が開催される。気候変動が金融システムに及ぼす悪影響は、米国のみならず、各国でも問題となっており、最近では9月に欧州中央銀行(ECB)が金融システムに対する気候変動の影響を分析した調査結果を公表している。COP26ではさまざまな議題が話し合われるとされており、気候変動がもたらす金融システムへの影響についても、重要な議題の1つになる可能性がある。

(宮野慶太)

(米国、欧州)

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