パワー・ツー・リキッド製造による「持続可能な航空燃料」の世界初の量産スタート

(ドイツ)

ベルリン発

2021年10月13日

ドイツ北部のニーダーザクセン州エムスラントで10月4日、世界初となる再生可能エネルギー由来の電力を用いて製造する合成ジェット燃料の量産プラントの開所式外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますが行われた。開所式には、アンゲラ・メルケル首相やスベニャ・シュルツェ環境・自然保護・原子力安全相らも出席した。

同プラントは、環境保護団体アトモスフェア(atmosfair)が運営するもの。「パワー・ツー・リキッド(PtL)」と呼ばれる方法で、気候に中立的(二酸化炭素排出量実質ゼロ)な「持続可能な航空燃料(SAF)」を製造する。具体的には、再生可能エネルギー由来の電力を用いて水を電気分解し、これにより製造された水素と二酸化炭素を合成して合成ジェット燃料を製造する。従来のSAFは、農業廃棄物や廃油などを用いたバイオ燃料が中心で、PtLにより製造された合成燃料がSAFとして商用利用されるのは世界初だという。

製造されたSAFは、パイロットカスタマー(試験的な顧客)としてルフトハンザ・グループが年2万5,000リットルを、少なくとも5年間購入する。同グループは、同燃料をルフトハンザ・カーゴと物流大手キューネ+ナゲルにも提供する。

PtLによるSAFについては、連邦政府、州および航空業界が2021年5月に、2030年までに少なくとも年20万トン(ドイツの国内線で消費する燃料の約3分の1に相当)を製造するロードマップを策定している。また、連邦環境汚染防止法(BImSchG)に基づき、今後、ドイツで提供される航空燃料には一定量のPtL合成燃料の混合義務が課されることになる。具体的には、段階的に、2026年に0.5%、2028年に1%、2030年には2%の混合とする。

シュルツェ環境・自然保護・原子力安全相は「ドイツはプラント建設のリーダーで、他の国には風力や太陽光資源が豊富にある。今回、PtLに関する技術が機能することを示すことができれば、プラントエンジニアリング輸出の新たな機会を創出することができる」と開所式で述べ、PtLに関する技術での世界の市場機会獲得に期待を示した。

(田中将吾)

(ドイツ)

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